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Aが狼狽えていると、カーキグリーンの服を着た青年……と言うには体格が良すぎる男が近付いてきた。きっちりと整えられた髪や利発そうな瞳から、ここにいる人間たちの中でも重要人物なのだろう。頭を抱えているグルッペンの頭を通りがてらに叩き、視線を合わせるようにしゃがみこんでくる。それでも幾分か視線は高いのだが、話しやすくなってはいた。
「結局のところ、お前は敵なんか?」
「……敵、という表現がどういったものを指すのかは測りかねますが、あなた達に影響を与える気はありません。
発端としては、そちらの……シャオロン様、でしたっけ、が私を保護という形で連れてきたのですから自らの意思で辿り着いた訳では無いですし……ああ、だとしても先程の廊下に光の子が居たのですから、少なくとも一度は訪問したかもしれませんね」
「光の子……さっき言ってた、こっちの世界に来てもうた星の子ってやつか」
「えぇ」
頷くと彼は立ち上がり、グルッペンの方に振り向く。
「別に放ったらええんちゃうか?こっちに悪意がある訳じゃないんやったらこいつがどうなろうと知ったこっちゃないやろ」
「うーん……それはそうなんだが……他国に見つかったら解剖どころじゃ済まないやろうし何より面白そ……げふんげふん、危ないやろ」
「面白そう」
「はは、そんなことで行動する訳ないじゃないかトン氏も面白そうと思うだろ?」
「うーんこの」
……なんだかよく分からない流れになってしまった。この男のお陰で話がまとまると思えばAに理解の及ばない話となってきた。更に困惑していれば、視界の端にこちらへ手を振る人間に気付いた。
おいで
口の動きから、そんな感じのことを言ってる気がする。話し合い……というか最早雑談になってきた二人から逃げる形でその人間の元に近付けば、小さくきゃあ、と嬉しそうに声をあげられた。
「かわい〜、ちっちゃい……!」
「服もふわふわしててかわいいね。マンちゃんすごく好きでしょ」
「ん!それにこの子からは悪意は感じひんし、なによりかわいいし」
近付いた瞬間、体が浮く。持ち上げられたのだ。へ、と声を漏らすのを無視して膝に乗せられた。
「軽……さすが未知の生命体ってところやな、かわいくて軽いとかもう正義やん」
「え、そんなに軽いの?でも小さい子供くらいだからそんなもんなのかな」
遂にAは思考停止してしまった。
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作者名:あまがし | 作成日時:2022年3月20日 21時