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普段ならこれで暗闇に放り出され、また光を別の星の子から頂いて現世へと戻る。使命に終わりはない。だからこそ、一番最初に辿り着く王国……孤島へと足を運び直し、光の子を連れて行く。そしてまた使命を果たすべく原罪へと向かう……というのがいつもの流れだった。
けれど、今回は違う。暗闇に放り出されることなく、柔らかな感覚に包まれる。
「清らかで、使命に奔走する愛しい星の子よ」
「あなたに、新たな使命を与えます」
そんな言葉が、Aに囁かれた。
動くことは叶わず、ただそれを受け入れるのみ。それが最初からの決まりだというように。
■
Aが目覚めると、そこは見慣れぬ天井だった。
柔らかな布に包まれていて、嗅ぎ慣れない匂いが広がる部屋……の一部。部屋の大部分を占めるであろう空間からはカーテンで遮られており、微かに声が聞こえる。
「あの子、明らかに人間じゃないよね？どこで拾ってきたの」
「えーと……国の丁度東端や。人気のない所に倒れててん」
「なるほどね……いや、なるほどじゃないんやけど。俺人間じゃない生命体の治療とかは出来ひんよ」
「それは分かるんやけど……クラレ先生に引き渡すより良いかなって」
「……それは、まぁ……取り敢えず人型だから寝かせてみたけど、なんかあったらシャオロンのせいやからね」
「ぐ……分かった、起きたら知らせてや」
「起きましたが」
シャッ、と音を鳴らしてカーテンを引く。しっかりと元々の被り物やケープの乱れは無く、少し癖のついた立ち姿を見せる。
驚愕と呆然とした表情を見せ、二人は声を揃えた。
「自分喋れたんか！」
「えぇ。本来なら有り得ないのですが……発声が可能になってます。不思議ですね」
どこか他人事かのように感心しているAに二人は若干の警戒を滲ませながら、じわりじわりと距離をとる。これが他国からのスパイであれば話は男であれ女であれ関係なく違うのだが、この生命体は人間ではない。そんなものがこちらの言語に完璧に適応しているのだから警戒するのは仕方ない。
「き、君は……何者？」
絞り出すように問う神の字を持つ男に、Aは優しく微笑んだ。
「区別名はA。使命を果たすべくこちらに参りました」
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作者名：あまがし | 作成日時：2022年3月20日 21時
