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一定の間隔を持って降ってくる岩と、容赦なく光を奪う赤い石。まだ新米の頃、輝きに惹かれて触れた瞬間に羽が散って師匠に叱られたのを覚えている。存外、この身も羽も脆いものなのだ。
石化してしまった仲間たちに光を分け与える。暖かな光がAから離れ、羽を分け与えたが故に少し体が苦しくなる。羽とは星の子の命に等しい。
この原罪では、全ての羽を失わない限り試練の達成を許さない。
そもそも、原罪に向かう目的が「石化してしまった星の子を救い、転生する為」なのだから当たり前なのだが。
降り注ぐ赤い石の合間を縫って駆け抜ける。岩の影にある石像に火を灯すと、優しい温もりに身を包まれた。散るまでは行かず、中途半端に残った羽が治っていくのが感じられる。言うなれば、回復ポイントか。羽がしっかりと治り、石が振る間隔を見極めて走り出した。
誰も残さないように。誰も置いていかないように。ほら、入口を見れば他の星の子も現れたじゃないか。
此処での任務も最後になるだろう。
Aは、しっかりと理解していた。
勿論、死ぬ訳では無い。
星の子に寿命なんて存在しない。勿論転生なんてしなくても死なないし、どれだけ羽を失っても関係ない。転生とは星の子の意思に委ねられている。だからこそ暴風域で挫けて転生しない星の子だって居るし、Aの様に活発的に転生を繰り返す星の子も居る。Aにとって暴風域や原罪は、挫けるほど苦痛ではなかったというだけである。まぁ、羽を失う痛みは嫌という程分かっているのだが。
Aが蹲る星の子に光を分け与える。石化した星の子たちに温度なんて無かったが、分け与えると同時に淡く輝くのだから、翼の力とは凄まじいものだと感心する。背後からは既に力尽きてしまった星の子たちの魂がユラユラと追ってきている。全員に分けても余ってしまうAの翼は、これから無意味に散るしかない。
敢えて岩陰の外に出て石に殴られる。この時の無力感や痛みは言葉に出来ない。けれど、そうしなければ原罪の達成には至らないのだから性質が悪い。毎度受けるようになった痛みにうんざりしながら、ごっそりと削られていく翼に耐える。
そうして、Aの使命は再び達成されるのである。
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作者名:あまがし | 作成日時:2022年3月20日 21時