キズナ【イナズマイレブン】 (ページ37)

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コイビト02 ページ37

馬鹿、と言われた動揺で止めてしまった足を動かし、ローファーを鳴らして歩くAを追いかける。どうやら僕は彼女を怒らせてしまったようだ。

だが、僕は彼女に何かした覚えがなく、頭を捻る。ーーいや、何もしていないことが問題なのかもしれない。僕らは恋人同士なのに、恋人っぽいことを何一つとしてしていないからだ。

だけど、と僕は思う。

だけど、仕方ないじゃないか、と思う。

僕は彼女の隣にいられるだけで満足だし、ハグやらキスやらを日常的にやっていたらドキドキなんてしなくなるんじゃないか、と思っている。

だから、僕はそういうことを、あえてしない。彼女も割とドライだし、それでもいいか、なんて思っていた。ーーだが。今日、とあるクラスメイトに言われてしまったのだ。

『お前らさ、冷めてるよな』

冷めてる。そう、冷めてる。

その時僕は、そんなことない、と反論した。僕は誰よりもAを愛してるし、理解もしてる、と。

確かに、キスしたくなる時だってある。どうしようもないくらいに愛しくなって。でも、そういうときはいつも、深呼吸して心を落ち着かせ、“欲”を抑えてた。

そういうことをしたら、今の関係が崩れてしまうような気がして。それが怖くて。

臆病だなぁ、と自嘲気味に笑う。こんなんだと、きっと幻滅されるんだろう。

女子はみんな、恋人ができたら毎日甘々になる……だなんて思っているけど。確かに、実際にそういう人もいるけど。でも、恋人同士になったとしても、あまり変わらないんじゃないか、とか思っていたりする。

「…………」

彼女のことをドライだとか言ったけど、自分も大して変わらないんじゃないか。そう思えてきて。
そんなことを考えていたからだろうか。Aにネクタイを引っ張られたことに反応できず、よろけてしまう。

視界いっぱいに、彼女の端整な顔が広がり、彼女の香りが鼻腔に広がる。唇の端を少し吊り上げて、悪戯っぽく笑う彼女に、目を奪われて。

ふに、と柔らかくて温かい感触が、唇に広がった。

だが、それも一瞬のことで、すぐにAは離れる。固まる僕を意に介さず、何事もなかったかのように歩き出す彼女に、僕はやっとのことで先程の出来事を飲み込む。

ーー彼女にキスをされた、という事実を。

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