キズナ【イナズマイレブン】 (ページ18)

今日:2 hit、昨日:2 hit、合計:15,377 hit

ナカマ09 ページ18

甲高い笛の音とともにボール後半戦がスタート。雪ノ成中は的確にパスを繋げて攻め込んでくる。

Aはサッとフィールドに目を走らせるとボールを持っている江森とその左を走る霜月の間に向かって走り出す。

「霜月！！」

「おう！……なっ！」

読み通り江森が霜月にパスしたところをAがカットした。パスコースを先読みしてカットする。それが彼女の得意とする技だった。

そのまま個人技で上がっていくが、彼女は目の前の試合ではなく別のことを考えていた。

「本当に、勝つことだけが期待されているの？」ーー先程士郎が彼女に言った言葉だ。

今は試合に集中しなきゃと思うが、その言葉がどうしても頭から離れない。

「(勝つこと以外に何を期待されてるの？わからない……わかんないよ……)」

「Aちゃん、こっち！」

気付くと相手に囲まれていた。このままここを突破することは彼女にとって容易かった。しかし、

「……はぁっ！」

短い気合の声を出し、士郎へとロングパスを繋げた。試合に集中できていない今、単独で上がるのは危険だと判断したからだ。

ゴール前まで下がり、再び思考にふける。だが、いくら考えても答えは出てこなかった。

「“ホワイトダブルインパクト”！」

「“かみなり……パンチ”ッ！」

彼らの攻防に湧き上がる歓声。見渡す限り、誰も彼もが楽しそうだった。

楽しそうーーそのワードが頭に引っかかり、とある記憶を呼び覚ます。目を閉じるとその時の映像が流れてくる。

『Aちゃんのプレー、すっごいきれーでみとれたの！』

そう言って無邪気に笑う少女。

『とってもたのしかった！あたし、おーきくなったらAちゃんみたいなプレーヤーになるのがゆめなの！』

世界大会の初戦でのことだった。

当時優勝候補であった中国対無名の日本。誰もが日本は負けると思っていた試合。そしてーーAにとって、1番楽しかった試合でもあった。