18 ページ18
心がずっしりと重くなっているが、それを無視して自宅のドアを開ける。
「A、おかえり。」
玄関まで駆け寄り、朝帰りした私を出迎えてくれた。
「俺、心配したんだよ。
ずっと帰ってこないからさ。」
声はいつもと同じように優しくて穏やかだった。
そして、顔も笑っていた。
しかし、目が笑っていないからか、雰囲気から来るものなのかは分からない。
実はものすごく怒っているのではないかと思う。
私は次の言葉を考えていた。
どうすれば奨くんの怒りを最小限に抑えられるのか。
それだけのことで頭がいっぱいだった。
「ほら、手洗って。
お腹は空いてる？
簡単なやつで良ければ作るから。」
「お腹は空いてる」とだけ答え、手を洗ってからダイニングテーブルの椅子に座る。
「はい、どうぞ。」
奨くんは私の前に温かいうどんを出してくれた。
私は目の前にあるうどんをすする。
胃に優しいからか、食べているとほっと心が落ち着く。
無駄な力が抜け、自然と口角が上がる。
「そんなに美味しいの？」
奨くんは、私の顔を覗き込んできた。
優しい笑顔、怒っていなさそうだ。
それでさらにほっとしていた。
うどんを食べ終えると、顔色が良くないからという理由で寝ているように言われた。
身の回りの世話は奨くんがしてくれるらしく、自分の粗相で奨くんの手を煩わせてしまうことを申し訳なく思った。
ぼーっと動画を眺めていると、買い物に行くと出て行った奨くんが帰ってきた。
荷物を置いてから私がいる部屋に来た。
「調子はどう？
顔色は良くなったね。」
奨くんはベッドに腰掛け、右手で私の左頬を包み込んだ。
大きな手から伝わる体温で、また心が温まる。
頬にあった手が頭へと移動し、優しく撫でる。
奨くんは愛しいものを見る目で、私を真っ直ぐに見つめる。
そして、すぐに私を抱き締める。
鍛え上げられた大きな体に包み込まれると安心する。
あの時、川尻さんに同じことをされたはずなのに、私の心は全然違う。
川尻さんの時は早く離れたくて仕方がなかったが、奨くんの時はリラックスしていて、ずっとここにいたいと思っている。
奨くんがそばにいるという安心感からか、段々と眠くなってきた。
そのままの流れで目を瞑り、意識が遠のいていく。
その間、奨くんが何を思っているのかを知らずに。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 185人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
プルメリア(プロフ) - ささん» 2作とも読んで頂きありがとうございます！ 嬉しいです！ こちらの作品優先にはなりますが、どちらも更新お待ちいただければ幸いです！ (11月7日 20時) (
レス) id: f9f8715533 (このIDを非表示/違反報告)
さ(プロフ) - 二つの作品一気に見ました☺️どちらもとても面白くてこれからも楽しみにしてます🎶 (11月7日 17時) (レス) @page19 id: 3db943dc83 (このIDを非表示/違反報告)
プルメリア(プロフ) - 3yjxQciJV7r5zPBさん» コメントありがとうございます！ そう言っていただけて大変嬉しいです！ 続きをお待ち頂ければ幸いです！ (11月5日 23時) (レス) id: f9f8715533 (このIDを非表示/違反報告)
3yjxQciJV7r5zPB(プロフ) - すごく面白いです！続きが気になります！ (11月5日 23時) (レス) id: de847680fb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：プルメリア | 作成日時：2023年11月1日 11時
