検索窓
今日:8 hit、昨日:10 hit、合計:41,878 hit

32話 吐き出す本音 ページ33

na side


「俺に挑んだのが運の尽きだな。それじゃ」

そんな言葉の後に、ナイフで刺す音が聞こえた。


「きんとき、やるじゃん」
「まぁ、それなりにはね」

敵のボスにとどめを刺したきんときは清々しい笑顔を浮かべていた。

「Nakamu…いや、蒼くんもよく頑張ってくれたよ」
「当然でしょ」

きんときに褒めてもらい、ふふん、と思わず鼻高々になる。
すっかり僕はNakamuに戻り、笑顔を浮かべてみせる。

「それじゃ、帰ろっか、任務報告もしなくちゃだし」
「あ、そう、だね…」
なんだかきんときの歯切れが悪い。

「きんとき?どうしたの?」
「…Nakamu、Nakamuはさ…俺の理想でしかない人格になって、辛くない…?」
「…どうして?」
「元々白田蒼って人間だったわけじゃん…?今でこそ慣れて自然とNakamuを演じれてると思うんだけど、それって蒼くんのしたいことじゃないよね」
「……」
「俺が“Nakamuでいてほしい”って言ったから、そうしてるんだよね。だから、なんだか申し訳なくて…」

「バカ!」
パシン
きんときの頬に1発平手打ちを入れる。

「いっ…?!」
「俺は、お前が好きだから、お前と居られるだけで楽しいし辛いと思ったことなんてない!」
「でも…」
「そりゃあ、Nakamuって人格は俺とは真反対だし、でも俺は二重人格ってわけじゃないしで、自分が訳わかんなくなることはあるよ」
「それなら…!」
「だから!もし俺が訳わかんなくなって色々ぐちゃぐちゃになったら、きんときが“お前はNakamuだ”って言えばいい!俺は、Nakamuという存在が、きんときにとって大切なものだって分かるから…!」

少し込み上げてくる涙をグッと堪え、俺は声を大にして叫ぶ。

「俺は、きんときにとってのNakamuであり続けたいんだよ!」

「蒼…くん…」
「白田蒼から言いたいことは全部言った。これでいい?」
「うん…全部、伝わった…」

涙をぼろぼろに流すきんときをぎゅっと抱きしめる。
「うゔ〜…ごめんね〜…頼りなくてごめんね…」
俺の腕の中で嗚咽を漏らす彼はなんだか新鮮だった。


「でも、Nakamu…寂しいから、たまには蒼くんに来てほしいな」
「ほぇっ?」
散々泣き腫らした表情でそんなことを言われる。
思わず変な声が出てしまった。


「…あは、任務の時は蒼になるかもね。そんなに寂しい?」
「うん…蒼くんあってこそのNakamuだなって、今思ったんだ」

その言葉に、ちょっと照れた俺がいた。

33話 楽しく打ち上げ!→←31話 作戦実行



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 9.9/10 (89 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
186人がお気に入り
設定タグ:ワイテルズ , WT
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

あおみどり(プロフ) - Ayameさん» コメントありがとうございます!この小説を楽しんで頂けたようで嬉しいです!次回作も是非よろしくお願いします〜! (2022年6月15日 7時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
Ayame(プロフ) - 執筆お疲れ様でした!完結おめでとうございます!とても好きで更新をいつも楽しみにしていました!本当に良作品をありがとうございました! (2022年6月15日 1時) (レス) @page37 id: 178e5a4b78 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - のんさん» いつも見てくださりありがとうございます〜!めっちゃ嬉しいです励みになります!! (2022年5月17日 23時) (レス) @page33 id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
のん - あおみどりさんの小説、やっぱし好きです〜! (2022年5月17日 5時) (レス) id: 23d1b06221 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ワ!!やっぱり神だ…… (2022年3月3日 2時) (レス) id: 73f49162b7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:あおみどり | 作成日時:2021年2月4日 22時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。