32話 吐き出す本音 ページ33
na side
「俺に挑んだのが運の尽きだな。それじゃ」
そんな言葉の後に、ナイフで刺す音が聞こえた。
「きんとき、やるじゃん」
「まぁ、それなりにはね」
敵のボスにとどめを刺したきんときは清々しい笑顔を浮かべていた。
「Nakamu…いや、蒼くんもよく頑張ってくれたよ」
「当然でしょ」
きんときに褒めてもらい、ふふん、と思わず鼻高々になる。
すっかり僕はNakamuに戻り、笑顔を浮かべてみせる。
「それじゃ、帰ろっか、任務報告もしなくちゃだし」
「あ、そう、だね…」
なんだかきんときの歯切れが悪い。
「きんとき?どうしたの?」
「…Nakamu、Nakamuはさ…俺の理想でしかない人格になって、辛くない…?」
「…どうして?」
「元々白田蒼って人間だったわけじゃん…?今でこそ慣れて自然とNakamuを演じれてると思うんだけど、それって蒼くんのしたいことじゃないよね」
「……」
「俺が“Nakamuでいてほしい”って言ったから、そうしてるんだよね。だから、なんだか申し訳なくて…」
「バカ!」
パシン
きんときの頬に1発平手打ちを入れる。
「いっ…?!」
「俺は、お前が好きだから、お前と居られるだけで楽しいし辛いと思ったことなんてない!」
「でも…」
「そりゃあ、Nakamuって人格は俺とは真反対だし、でも俺は二重人格ってわけじゃないしで、自分が訳わかんなくなることはあるよ」
「それなら…!」
「だから!もし俺が訳わかんなくなって色々ぐちゃぐちゃになったら、きんときが“お前はNakamuだ”って言えばいい!俺は、Nakamuという存在が、きんときにとって大切なものだって分かるから…!」
少し込み上げてくる涙をグッと堪え、俺は声を大にして叫ぶ。
「俺は、きんときにとってのNakamuであり続けたいんだよ!」
「蒼…くん…」
「白田蒼から言いたいことは全部言った。これでいい?」
「うん…全部、伝わった…」
涙をぼろぼろに流すきんときをぎゅっと抱きしめる。
「うゔ〜…ごめんね〜…頼りなくてごめんね…」
俺の腕の中で嗚咽を漏らす彼はなんだか新鮮だった。
「でも、Nakamu…寂しいから、たまには蒼くんに来てほしいな」
「ほぇっ?」
散々泣き腫らした表情でそんなことを言われる。
思わず変な声が出てしまった。
「…あは、任務の時は蒼になるかもね。そんなに寂しい?」
「うん…蒼くんあってこそのNakamuだなって、今思ったんだ」
その言葉に、ちょっと照れた俺がいた。
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あおみどり(プロフ) - Ayameさん» コメントありがとうございます!この小説を楽しんで頂けたようで嬉しいです!次回作も是非よろしくお願いします〜! (2022年6月15日 7時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
Ayame(プロフ) - 執筆お疲れ様でした!完結おめでとうございます!とても好きで更新をいつも楽しみにしていました!本当に良作品をありがとうございました! (2022年6月15日 1時) (レス) @page37 id: 178e5a4b78 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - のんさん» いつも見てくださりありがとうございます〜!めっちゃ嬉しいです励みになります!! (2022年5月17日 23時) (レス) @page33 id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
のん - あおみどりさんの小説、やっぱし好きです〜! (2022年5月17日 5時) (レス) id: 23d1b06221 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ワ!!やっぱり神だ…… (2022年3月3日 2時) (レス) id: 73f49162b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:あおみどり | 作成日時:2021年2月4日 22時