27話 今度は俺の番 ページ28
na side
「こんな意気地なしで、ごめんね」
きんときはずっと謝り続けている。
もう大丈夫だよ、と言っても、きんときは止めようとしない。
「きんとき、もう謝らないで…」
「……ごめん、ごめん……、…ありがとう」
「え」
一瞬聞こえた、違う言葉。
自身の涙を拭い、きんときは続ける。
「俺を、信じてくれて、ありがとう」
「……」
信じる、か。
俺は彼を信じたから、ちゃんと話してくれたのかな。
「俺が信じてたのは、俺がきんときのこと、ちゃんと好きになったからだよ」
「どういう…」
きんときの言葉を遮って、俺は話す。
今度は俺の正体を話す番、だから。
「きんときは、俺が誰か、知ってるんでしょう？」
「…白田、蒼、だろ…」
「正解。お前が殺した、あの白田蒼だよ」
もうNakamuという仮面を外し、慣れた口調で話す。
「…きんとき、俺はさ、この身体になった最初は、とっっっってもお前のことが嫌いだったよ」
「……」
俯くきんときの身体は微かに震えている。
でも俺は、ありのままの“白田蒼”として話し続ける。
「正直憎たらし過ぎて、タイミングを見計らってお前を殺そうとまでしたくらいだ」
「…そうか」
「まぁ、お前が一流のスパイだったせいで、そんなタイミングなんてものは無かったんだけどな」
きんときは黙って話を聞いている。
「でも…なんでだろうな。だんだんお前という人間を、受け入れちゃったんだよな。あんなに嫌いだった奴が、恋人なんて。笑えるね」
自嘲の笑みを浮かべ、お茶を飲み干す。
「…もう、俺はお前を殺せない」
「…Nakamu……」
「俺は、お前に惚れちまったからな」
ニカッと無邪気な笑みを浮かべてみせる。
さっきまで俯いていたきんときは、俺の目をしっかりと見つめていた。
気付けば4人は部屋から退出していて、俺ら2人だけの状態になっていた。
この話は少し気恥ずかしいから助かったな。
「きんとき」
「何？」
「お前は…今の俺を見て、どう思った？」
「どういうこと？」
「これからも、お前の理想の“Nakamu”でいてほしいと思ったか？」
「…そう、だね」
「分かった。じゃあ明日からはもう“白田蒼”は封印だな」
「……」
「ほら、ぼんやりしてないで、帰るぞ」
俺はきんときの手を強く引っ張り、部屋を出た。
するとすぐそこにスマイルが立っていたから、出口まで案内してもらった。
今だけは、“Nakamu”としてじゃなくて、
“白田蒼”として、きんときの隣に立っていたいと思えた。
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あおみどり(プロフ) - Ayameさん» コメントありがとうございます！この小説を楽しんで頂けたようで嬉しいです！次回作も是非よろしくお願いします〜！ (2022年6月15日 7時) (
レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
Ayame(プロフ) - 執筆お疲れ様でした！完結おめでとうございます！とても好きで更新をいつも楽しみにしていました！本当に良作品をありがとうございました！ (2022年6月15日 1時) (レス) @page37 id: 178e5a4b78 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - のんさん» いつも見てくださりありがとうございます〜！めっちゃ嬉しいです励みになります！！ (2022年5月17日 23時) (レス) @page33 id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
のん - あおみどりさんの小説、やっぱし好きです〜！ (2022年5月17日 5時) (レス) id: 23d1b06221 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ﾜ！！やっぱり神だ…… (2022年3月3日 2時) (レス) id: 73f49162b7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：あおみどり | 作成日時：2021年2月4日 22時
