26話 涙と信頼 ページ27
na side
きんときたちに連れてこられたのは、なんか、広い建物。
スマホを開くと、地図には載っていなかった。
郊外ってわけでもないのに、こんなものがあるんだ、と少し驚く。
「いいよ、入って。」
「おじゃましまーす、、」
おそるおそる中に入る。
セキュリティもしっかりしていて、内装もシンプルだけど便利な機能がたくさんついてる。
すごい。
目をキラキラさせている俺とは裏腹に、隣を歩くきんときはどこか暗い雰囲気を感じる。
ちょっと、ピリッとしてるような…
きんときについていくまま歩いていると、何人か男性と出会った。
その人たちはみんな俺に対して深々と礼をしてきた。
『な、Nakamu…さん…!?』
吃驚しているような、怯えているような声色だった。
「ここが俺の部屋。そこに椅子があるから、座って待ってて」
物が少ない質素な部屋。
言われた通りに椅子に座ってきんときを待つ。
他の4人は俺の周りに立って待っていた。
しばらくすると、きんときはお茶を持ってやってきた。
「Nakamu、もう薄々勘づいてると思うんだけど、Nakamuは記憶を失ってる。それは…俺たちがやった。いや、俺が」
真剣な面持ちでそう語り始める。
「Nakamuは俺と付き合ってて、デートをしてる時に、事故にあった。…でも、今のNakamuが知りたいのはそこじゃない、よね」
「…え」
心を読まれている。
そうだよ、俺が知りたいのは、事故にあったことじゃ無くて、
俺の正体について。
「簡潔に言う。Nakamuは、俺たちが所属するマフィアのボス」
「…!」
ボス?俺が?
こんな細い身体で?
じゃあ、どうやってボスを務めてたんだろう。
「どんな、人間だったの?」
「んー…正直言うと…ボスは、狂ってた、かな」
「狂ってた?」
「言い方は悪いけどそんな感じ。人を傷つけることが大好きなボスでさ、俺たちがミスすると…まぁ、“教育”っていう仕置きをされたんだよ」
ああ、そうなんだ…
さっきすれ違った人達が怖がるような顔をしてたのは、そういうことだったんだ。
みんな俺のことが怖かったんだな。
「…Nakamuは、これを聞いてどう思った?」
「…別に、どうも…」
「怖い?」
「怖くはない」
「俺のこと、嫌いになった?」
「そんなわけないじゃん」
「…ずっと黙ってて、ごめんね」
「……?!」
急に俯いたかと思うと、きんときは一筋、涙をこぼしていた。
初めて見た、彼の涙。
真実を知れた事より、彼が打ち明けてくれた事が、
自然と、“嬉しい”と思えた。
186人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「WT」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
あおみどり(プロフ) - Ayameさん» コメントありがとうございます!この小説を楽しんで頂けたようで嬉しいです!次回作も是非よろしくお願いします〜! (2022年6月15日 7時) (レス) id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
Ayame(プロフ) - 執筆お疲れ様でした!完結おめでとうございます!とても好きで更新をいつも楽しみにしていました!本当に良作品をありがとうございました! (2022年6月15日 1時) (レス) @page37 id: 178e5a4b78 (このIDを非表示/違反報告)
あおみどり(プロフ) - のんさん» いつも見てくださりありがとうございます〜!めっちゃ嬉しいです励みになります!! (2022年5月17日 23時) (レス) @page33 id: 65d1867b2a (このIDを非表示/違反報告)
のん - あおみどりさんの小説、やっぱし好きです〜! (2022年5月17日 5時) (レス) id: 23d1b06221 (このIDを非表示/違反報告)
のん(プロフ) - ワ!!やっぱり神だ…… (2022年3月3日 2時) (レス) id: 73f49162b7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:あおみどり | 作成日時:2021年2月4日 22時