私自身は ページ32
．
パチリ、と目を開く。
目の前は白い天井。
つい先月まで見てた、木目の天井じゃない。
寝てるのもベッドの上だし、陽の光も障子からじゃなくてカーテンの隙間から。
帰って来た事に、未だに違和感を覚える。
まだ私はあの場所にいる気がしている。
いつまでも、未練がましくいる訳にもいかないんだけど。
私はのそりと起き上がり、自室のドアを開ける。
そのまま洗面台に向かい、歯を磨いて顔を洗う。
なんか、この顔久しぶりに見たな。
自分の顔なのに、仮面を被っている時間が長い所為で、何だか知らない人の顔に思える。
『あ、あー。うん、問題なし』
いつも通り、声の調整を行う。
これは何かもう慣れて来た。
確かに、自分の声では無いのだけれど。
私達諜報部は、顔、声は変えるよう言われている。
私達は家族以外に、自分の顔を見せることは許されない。
どこから漏れるか分からない、私達の情報を絶対守り抜く為だ。
ただこれは、私達の孤児院の時からこの生活が始まる。
同期の彼らの顔も、孤児院の先生の顔も、上司の顔も知らないのだ。
見たいとも思わない。
それが普通だから。
『いってきまーす』
こないだ買ったばかりの、ストライプのスーツを来て、ほんの少しあるヒールのパンプスを履いて、私出勤した。
幼い頃、こんな風に歩いてる大人がカッコよく見えて仕方なかった。
自分もあんな風になりたい。
そう思っていたけど、今は早く辞めたい。
でも定年なんてあるのか分からないから、そんな願望は捨てる事にしてる。
『おはよーございます』
私がそう言ってドアを開けると、あちこちからおはよー、と返ってくる。
自分のデスクに座ると、隣のデスクの弥生くんがぴっ、と一枚の封筒を差し出した。
『何これ』
「お前の姉さんから」
どきり、とした。
そっと弥生くんの手から封筒を取り、その場で開けるかどうか迷った。
姉さんは、私が政府で勤めている事を知らない。
大学に通ってると嘘をついてる。
たまたま今年から、関西で仕事だと言っていた姉さんには、すらりとそんな嘘が出た。
だけど、やっぱり怖い。
何故なら、姉さんは私の仕事に反対するだろうから。
身内からの手紙なのに、罪悪感と緊張で震えそうな手で、封を切った。
．
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 239人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よこみ(プロフ) - …さん» 夜分遅く大変失礼致します。コメントありがとうございます!そのように言って頂けて嬉しいです。 (2019年7月9日 1時) (
レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
… - すき (2019年6月10日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - 幽華睦月芙蓉伊-零号機さん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。今後とも宜しくお願いします!! (2019年2月17日 15時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
幽華睦月芙蓉伊-零号機 - んんんんんっ…めっちゃいい話です！これがというか、まとめ読みしましたぁ！続きとか待ってます！でもお体にはきをつけてください！ (2018年12月18日 19時) (レス) id: 1c7ece0b61 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よこみ | 作成日時：2018年12月13日 17時
