ひとり ページ17
．
『いった…』
私は後ろ手に戸を閉めながら、部屋を出た。
勿論、挨拶なんかしない。
あぁー、痛い。
何であんな思いっ切り殴るかな。
まだグーじゃなかったから良かったけどさ。
頬を押さえながら歩く私は、きっととんでもない程不機嫌な顔をしているだろう。
さっきからどの役人も、私に声を掛けてくれない。
「おい、あの女…」
「噂のやつか?」
あぁ、違う。
政府内での私の立場のせいか。
だから、ここに来るの嫌いなんだよね。
殴られるし、噂されるし。
私は、さっき宗三くんと分かれた部屋まで来て、ため息をつきながら扉を開けた。
すると、彼はとても驚いた顔をしていた。
「主?何ですか…その顔」
『え、悪口?』
私がそう言うと、彼は何言ってんだこいつみたいな顔をした。
いや失礼だな。
「違います。その顔、誰に殴られたんですか?」
『え、あぁ。ちょっと階段で歌って踊りながら降りてたら、足滑ってふらついて、顔面から打っちゃって』
「色々大丈夫ですか?」
あはは、と笑いながら、私は彼の顔を見た。
彼はとても悲しそうな顔をして、私の顔を見ている。
私は未だに、この顔に慣れない。
心配されることに慣れない。
痛みは、幼い頃に失った。
辛い思いをするくらいならば、それを感じなければ良いと思った。
だから、どこに行っても、何をされても、何も感じないようにした。
だけど。
私は三年前のあの日から、かなり変わってしまった様だ。
私は痛くなくても、私の大切な人達が辛そうな顔をするのだ。
それに慣れたことは、あの日から今まで、一度もない。
『宗三くん、気にしなくていいよ。本当に階段で転んだだけだから。さっ、早く帰ろう?薬研くんに手当してもらわなくちゃ』
「……はい。分かりました」
宗三くんは、納得してなさそうな顔をしながらも、私の横を歩いてついて来てくれた。
君達は、何も知らなくていい。
苦しむのは、私一人で充分なのだ。
．
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よこみ(プロフ) - …さん» 夜分遅く大変失礼致します。コメントありがとうございます!そのように言って頂けて嬉しいです。 (2019年7月9日 1時) (
レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
… - すき (2019年6月10日 20時) (レス) id: 1276fff981 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - 幽華睦月芙蓉伊-零号機さん» コメントありがとうございます!返信遅くなり申し訳ありません。今後とも宜しくお願いします!! (2019年2月17日 15時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
幽華睦月芙蓉伊-零号機 - んんんんんっ…めっちゃいい話です！これがというか、まとめ読みしましたぁ！続きとか待ってます！でもお体にはきをつけてください！ (2018年12月18日 19時) (レス) id: 1c7ece0b61 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よこみ | 作成日時：2018年12月13日 17時
