お人形さん ページ37
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「主ー、お客さんだよ」
私がこの本丸に来て、三ヶ月程経った。
そろそろだろうと思っていたら、やはり来たようである。
『誰?』
「政府の役人」
私は可愛い君に、彼を私の部屋に通し、お茶を出してやるように頼むとやっていた仕事の書類を片付けた。
そして厨に行き、昼食の準備をしてくれているであろう燭台切くんを訪ねた。
『燭台切くん、居るかい?』
「主、どうしたの?」
『ちょっとお客が来てね、私は後で昼食摂るから先に食べていてくれ』
「分かった」
私は自室へ戻り、襖を開けた。
するとそこには、よくお目にかかるお役人さんが、綺麗な居住まいをして座っていた。
『遅くなって申し訳ない』
「いえ、大丈夫ですよ」
『それで本日はどの様な御要件で?』
私がそう言うと、彼は黒い鞄の中から「機密事項」と書かれた書類を出した。
そしてスッと私に差し出す。
私はそれを受け取り、パラパラと流し見した。
「本日は、その件で訪ねさせて頂きました」
『今更ではないですか?知っていて連れて来たのでしょう?』
「勿論です。ですが、細かい事が決まったのは先日ですから。貴女の身体検査の結果を見た上で、決まった期間です」
『なるほど。しかし短過ぎでは?これではここを立て直すことは出来ませんが』
「えぇ、何せ政府の目的はそれではありませんから」
私は書類から彼へ目線を移した。
彼はいつもと同じ、無表情だ。
特に何か感情がある訳でもなく、ただ淡々と仕事をしている。
まるで…
『政府のお人形さんみたい』
「そんなものですよ、我々は」
彼はそう言って、お茶を啜った。
『まぁ私は何でも構いませんが…あの人達は無事なんですよね?』
「はい、今のところ誰かがお亡くなりになったという報告は受けていません。特に目立つ行動もされていないようです」
『それなら良いです。私はそのためにここに居ますから』
彼女は微笑んで、そう言った。
本当に、綺麗に笑う人だなと思った。
その綺麗過ぎる笑みが、俺は嫌いで仕方がないけれど。
失礼します、と言って俺が襖を開けると、加州清光が居た。
俺は何も言わず、彼の横を通り過ぎた。
本邸を出て、俺はポツリと呟いた。
「本当、家族が大好きな人だな」
ほんの少しだけ、彼女を可哀想だと思ってしまった。
こんな籠に閉じ込められ、家族の為に政府の言う通りになる彼女のことを。
貴女も、私に負けないくらいお人形さんですよ。
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よこみ(プロフ) - 仙寿さん» お気遣いありがとうございます!これからもこの作品を宜しくお願いします!! (2018年8月25日 15時) (
レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
仙寿(プロフ) - 初めましてです！いつも楽しく読ませて頂いております！体調ご慈愛しつつ、よこみ様のペースで更新して頂ければ幸いです！ (2018年8月25日 0時) (レス) id: 6a904cca90 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - 和奏さん» ありがとうございます!気遣って頂いて嬉しいです。これからもどうぞ、よろしくお願いします!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - *みき*さん» ありがとうございます!更新不定期ですが、よろしくお願いします!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - よっしーさん» 面白いなんて…ありがとうございます!とても励みになります!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：よこみ | 作成日時：2018年4月6日 8時
