加州清光の決意 ページ31
.
木刀の交わる音がする。
早朝、まだ刀剣男士も起きている者は数人。
だが、本丸の鍛錬場では、もう二時間程はこの音が聞こえていた。
「はあぁぁ!」
『だからぁ…それじゃあすぐに終わるって、言ってるだろう』
突いた木刀を持つ腕は掴まれ、そのまま木刀は落とされたと思えば、体が宙を待った。
それに気づいた時には、もう体は床とこんにちはをしていた。
ズダァン!と大きな音がして、加州清光は顔をしかめる。
「ったぁ……」
『まだまだだな、私に勝てないでどうするんだ』
「いや…主が強すぎるんだよ…」
主は嫌な笑みを浮かべて、俺の顔を覗いてくる。
このまま顔を上げて、顔面アタックしてやりたいところだが、どう考えても避けられるので無駄なことは止めようと思った。
あの日。
時間遡行軍が攻めて来た日、何も出来なかった自分が腹立たしくて、主に稽古を付けてもらうように頼んだ。
正直、女の主に頼むのはあまり良い気持ちはしなかったけど、ここで一番強いのはきっと主だ。
だから、彼女に頼むべきだと思った。
俺は体を起こして、ふぅ、と息を吐いた。
主の言っていることは最もだ。
主に勝てるようにならなきゃ、検非違使にだって勝てない。
政府は、結界を強めてくれたけど、だからと言ってもう二度と敵が攻めて来ない保証はないんだ。
主にずっと護られてるなんてダメだ。
俺が、俺達が、主を護れるようにならなくちゃ。
「もう一回!」
『またぁ?もう良いじゃん、君も疲れてるでしょ』
「俺は大丈夫だよ」
『…ふぅん、じゃーあ』
主は、肩に乗せていた木刀を持ち直して、右足を前に出す。
次の瞬間。
彼女の木刀は、俺の喉元にあった。
息が、詰まる。
目に止まらない程の速さ。
『つい一時間程前まで避けられていたコレに反応できないようじゃ、君は相手にならないよ』
彼女はそう言って木刀を下ろし、俺の額にデコピンをした。
俺が呆然としている間に、彼女は木刀を直し、欠伸をしながら鍛錬場を出て行った。
「……絶対、超えてやる」
.
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 474人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「刀剣乱舞」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
よこみ(プロフ) - 仙寿さん» お気遣いありがとうございます!これからもこの作品を宜しくお願いします!! (2018年8月25日 15時) (
レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
仙寿(プロフ) - 初めましてです！いつも楽しく読ませて頂いております！体調ご慈愛しつつ、よこみ様のペースで更新して頂ければ幸いです！ (2018年8月25日 0時) (レス) id: 6a904cca90 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - 和奏さん» ありがとうございます!気遣って頂いて嬉しいです。これからもどうぞ、よろしくお願いします!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - *みき*さん» ありがとうございます!更新不定期ですが、よろしくお願いします!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
よこみ(プロフ) - よっしーさん» 面白いなんて…ありがとうございます!とても励みになります!! (2018年7月1日 20時) (レス) id: 5f62df7634 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：よこみ | 作成日時：2018年4月6日 8時
