死霊捜査官【d!】 (ページ7)

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．思召し？ページ7

分かり切ったことを質問すべきではなかったと後悔する時にはもう遅い。彼女が戸惑い、落胆し、涙を流した先にはこのことがあったのだと。マンダリンは哀れみを抱きながら彼女を捉え、何かしらの言葉を必死に探し求めているようであった。そんな彼よりも先に私は言葉を見つけて発した。

「すまない、あまりよくない事を聞いてしまったね。彼は、何か君に対して…その例えば絶交だ、とか愛していないとか、告げたことはあったのか？」
「えぇ、最後の神様の思召しが下った時に彼は…」
「そうか…」

　さぞ辛かっただろうと言いながら彼女の手をそっと握る。止まった筈の涙はまたポロポロと流れ落ち、嗚咽が室内に響き渡った。

「師匠、この思召しの元凶って…やっぱり。」
「まだ分からん、ただ、あそこに関りはあるはずだ。あぁ…そうだ。ミレーナ、数日前にこちらへ私の友人が来なかったか？」

「ご友人、ですか？」
「目立つはずだから直ぐにわかるだろう。煙を常に携えて、長い前髪と眼鏡の奥に活力の欠けたネイビーを持ち、軽薄に女性を誑かす。そんな旅人が来なかっただろうか？」

「…そのような方は、一度たりともお見掛けしておりません。」

　彼女はふと鼻を掻いた。それはとても自然な仕草で、先程まで涙に暮れていた女性ならば当然の反応であろう。その仕草の先の手の行方を私はじっと見つめ、そしてなおも落ち着きのなく髪を触って仕舞いには拳を握ってその姿を隠しこんでしまった様子からはぁと溜息をついた。

「分かった、ありがとう。如何やら此処(・・)に彼は来ていないようだから私たちは去るよ。」
「えっ師匠…？」

「そうでしたか、お力添えになれず…」
「喪に服している時にすまないね。アランの為に祈るよ」

　そういってミレーナに別れを告げて暗いレンガ造りの家を後にした。私の後をばたばたとついてきながら、カーヌーンの音が弾け飛んで私を責め立てる。

「師匠！彼女、何か知っている様子でしたよ、なんで追及しなかったんですか？」

「…わからないのか、チーノ。」

　少し立ち止まって彼のマンダリンをじっと捉える。睨みつけたわけではないが彼はひるんで先程までの威勢を失い言葉を詰まらせた。そして少し考えてはっと気づいた顔をしたのを見ると再び私は歩を進める。

「ってことは、あの人は今ほんとにやばいんじゃ…」
「かもしれない。夜だ、行くぞ。」
「…わっかりました！！」

　アイリスの花が咲き誇る道を私たちは進んだ。