死霊捜査官【d!】 (ページ6)

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．思召しページ6

こちらへ、と案内されたのはレンガ造りの橋に組み込まれた住居。日中であるが橋の下ということもあって少し暗い。その為か家の玄関周りはおいおいと茂った蔦が包んでぱっと見何処が入口なのかがわからない。

　中に入ると思っていたよりも広々とした空間が広がっており、どうぞと言われるがままに椅子へ腰を掛けた。お茶は要りますか？という彼女の配慮に先ほど飲んできたからと断りをいれて、客人が来て落ち着かない様子である彼女にも座ってもらう様に促す。

「…すまないな、こんな時に。」
「いえ、旅人さんですよね。」
「あっはいそうです！師匠、自己紹介自己紹介！」

　そういえば忘れていたと思いながら彼女に自身の名を名乗る。勿論秘跡庁からやってきたことは包み隠して。私の自己紹介に続いて得意げにカーヌーンの声は自身の名を告げた。前座が整ったところで彼女へと本題を切り出す。

「あのアランと君とは一体どういう関係だったんだ。」
「小さい頃から幼馴染で、先日婚約の祈りを捧げてもらったところでした…彼は、本当に私の事を愛してくれていたんです。でも、でも…」

　途端に彼女はまるで悪魔でも見たかのように青ざめ、頭を抱えて涙を落とした。追って質問をしようとしたその口を噤んで私は彼女の傍に立ちそっと彼女を背後から抱きしめた。酷く小さな身体で、放っておけば壊れてしまいそうだった。

　 ■

「すみません、ありがとうございます。」
「気にしないでくれ、無理を言ったのはこちらだ。」

　腫れた目を更に擦るものだから私は目配せして暇そうにしている彼に何か冷やすものを持ってくるようにと命じた。その間、呼吸もかなり整ってきた彼女へ私は先ほどの質問の続きを試みることにした。

「アランはどうしてあのような姿になったんだ？」
「それは…神の思召しです。」
「へぇ、俺ら結構旅してますけどそんな話聞いたことないですねぇ。あっ、ミレーナさんこれ良かったら。」

　丁度台所から濡らしたタオルを持って戻ってきたカーヌーンが興味津々に音を奏でる。ミレーナがそれを受け取って眼に当てた。

「思召し、人の首がなんになるのだというのだ。」
「院長先生によると、魂(プネウマ)は頭に宿る。それが完成された時に愛するものとエデンにいるという…」
「愛するもの、婚約の祈りや結婚式など儀礼による締結に置いての愛の事を指しているのだろうか。」

「そう、です。」