死霊捜査官【d!】 (ページ34)

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．昔いまし今忌しページ34

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「美味いな…」

　久方ぶりの食事は、幼馴染からの差し入れだった。庁舎からは少し離れているから普段滅多に与れない代物だ。特に、ここ最近は色々な業務に追われてしまって、取り敢えずの生活をしているような気がする。

　ここ数年、殆ど顔を見せなかったあいつを死霊捜査官なんていう形で秘跡庁の管轄下に置いたのは、グルッペン直々の提案だった。あの人の考えは、そりゃ理解が出来る。なんていったって、一番の被害者であり、今起こっているすべての出来事の引き金であるのだから。無駄な被害も出さなくて済むし、組織のトップとして正しい判断だから拒否しなかった。
　
　でも、俺としては別にあのまんま何も知らずにいればと思わんことはなかった。形が変わっても歪んでしまっても、そのまま目の届く場所にいるだけで充分だった。

「(なんて、そんな事今更思った所で、俺は……)」

最後のミックスサンドを一口で頬張り、咀嚼、そして嚥下する。
　
　美味しい食事を久々に取った、色のある食事だ。本当にあいつには感謝しなければ。このサンドイッチ、昔から“彼女”は好んでいたように思う。いつもいつも、このサンドイッチを持ってきて、栄養足りてるかと心配していた彼女の姿を思い出す。

「トントン、野菜ちゃんと食べている？」
「合間にでもいいからサンドイッチ、食べて仕事頑張ってね。」
「少しくらいは息抜きしても大丈夫だよ！」
「お疲れ様、トントン。」

　俺が書記官になった頃に、彼女は補佐官として秘跡庁に勤め始めた。今でこそ慣れてしまったが、あまりにも職務に追われ食事もままならない様な時期だった。死んだ眼で歩いていれば、決まって彼女が心配して差し入れをくれたものだ。本当にしっかり者の、優しい幼馴染だった。いや、それはいまだってそうだけれども。俺は、そんな彼女に何かしてやれたのだろうか。

「(……あいつと会うと昔の事ばかり思い出してあかんわ。取り敢えず、今のうちにやらなあかん事やってまお。」

　西部教会のごたごたは今に始まった問題ではない。その問題をまとめ上げられる人材が教区長として抜擢されている。ただ、如何やら今回はそれだけに収まらないと見受けられる。コネシマが適当な事をやった訳ではない。ただ、非常にめんどくさい事になってるわけで。

＿＿うまく、あいつの手を借りずに済ませられたらええんやけどな。