死霊捜査官【d!】 (ページ33)

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．夜の訪問ページ33

相変わらず無駄に装飾が施されている事だ。黒、黒、黒。ここで働く者は哀れだな、常に死に監視されているようなものなのだから。同行者は、何とも怠そうに私の後をついてくる。カツン、カツンという二つの足音だけが周りに響き渡る。まぁ、こんな時間まで働いている者なんていないだろう。

＿＿＿ただ1人を除いて。

「あ、A。」
「わ、社畜。」

　眼前の男はその言葉に顔を顰めた。彼はトントン、この秘跡庁の書記官である。流石と言った所だろうか、彼はこの国一番の働き者といって過言ではない。どうせまだこの時間帯ならここにいるだろうと思い訪れて正解だった。
　というか、公的な窓口は流石に閉まっているものの、庁舎の中に普通に案内されるのはよくわからない。今は夜の九時を過ぎている。なんで入れるんだ、閉めとけよ。

「あぁ、任務の話か？悪いけど明日に………」
「はい、これ。」

　問答無用で報告書を突きつける。これは、私が帰りの列車内でしたためていたものだ。それを見るとあぁ………ですよねと彼はガクリと肩を落として受け取った。

「はいはい。受け取りましたわ。でもあの人の事やから別で呼び出しあるかも知れん。」
「必要な件だけ呼び出してくれ。出来れば面倒ごとはごめん。」
「あぁ～それは無理かもしれんな。」
「最悪だな。」

　全く、一つ引き受ければ次から次へと面倒ごとが舞い込んでくる。まぁ、自分でやると言ってしまったのだから仕方がない。

「すまんな、俺も手伝いたい所やけど生憎暫くの間出向く事になって。」
「西部教区か？」
「情報が早いな。まぁ、監察で行くだけやし。そっちは問題ないと思うけどな。」

　西部の問題はかなり深刻の様だな。書記官が直々に出向いて処理するなど、滅多にない事だ。まぁその方が収まりが良いのかもしれないが。しかし、そっちは、という言葉が気になる。彼は、いつも大事なことは隠しこんでしまう。長い長い付き合いで、漸くそんな事に気づくようになったものだ。まぁ、今更だが。

「そう、まぁ気をつけて。じゃあお暇するよ。」
「お疲れさん。」

　土産だ、といって適当に買ったミックスサンドを押し付けて帰る。どうせ彼の事だ、仕事づくしで碌な食事をとっていないのだろう。渡すと一瞬驚いた様子であったが、心なしか彼の疲れた顔が緩んでいる様に見えた。