死霊捜査官【d!】 (ページ28)

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．去る列車ページ28

首都行の列車に無事駆け込み＿＿といっても、精神病院での一件がすぐに広まっているようで町中が大騒ぎの中抜け出すのは一苦労だった、取り敢えず面倒ごとはすべてウツに任せて逃げてきた。暴徒と化す事はないだろう。あいつなら正しく人々に説明はできるし、それくらいは何度もやっている為後処理係として心配はない。ただ、調査は無事済んだもののグルッペンへの土産を買うような暇はなかった。ご機嫌をどう取ろうか、まぁ適当に何処かで甘味を買っていこう。

　隣のマンダリンの彼は、顔には表さないがそれなりに疲れているようだ。列車の揺れに瞼がどんよりとしている。それもその筈だろう。徹夜仕事だったのだから。

「……今回は中々よくやってくれたね、チーノ。ただ、これ以上人殺しを重ねれば告解が重くなる。私の手でも流石に負えない。」
「えへへ、まぁ大丈夫ですよ！」
「知らないぞ。今は、ご機嫌取りをしてやってるがいずれ首が飛ぶのは君だ。」
「怖い話ですね〜」
「君の話をしているんだが。」

　私の話など興味がないようで眠気覚ましついでか、彼は自分の鞄から愛用のブローニングM1900を取り出し、先の戦闘で酷使したその身体を労わるように撫でた。そして、セーフティがかかっているその銃を私の脳天へと突き付ける。
　
「僕は、人を殺さないと生きていけない性質なんですよ。知っているでしょう？」
「知っているさ。悔い改めなければ死霊になる。悔い改めても首は飛ぶ。」
「それでもいいんですよ。」
「はぁ、化け物の生活は楽じゃない。それまでに考えを改める事だな。」」

　師に銃口を突きつけるなど、なんと不届き者なのだろうか。手に負えない猛獣ばかりだ、どいつもこいつも。冗談のつもりだろうが、平穏な列車の中で騒ぎを起こしたくない。彼の銃口を摑んでそのまま取り上げる。あぁ～とか情けない声で、おもちゃを取り上げられたような子どもの様に彼は地団駄を踏んでいるが知った事か。少しは反省しておけばいい。

　しばらくすると、彼は眠ってしまったようだ。呑気に涎まで垂らして、こうしてみれば本当にどこにでもいる青年なのが不思議だ。彼の事は未だによく知らない。どういう生活をしてきたのかも、彼は離さない。ただ、私を師と仰いでどこまでもついてくる。本当に不思議な子だ。涎を垂らしたままでは格好がつかないので軽くふいてやる。だらしのない口角、どうやらいい夢を見ているようだ。

「………………最高やん、へへへ。」
　