死霊捜査官【d!】 (ページ27)

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．残骸と始末書ページ27

「とにかく、帰ろう。それとウツ。君は始末書を覚悟しておくように。」
「えぇ〜まだ帰りたないわ。めちゃくちゃ帰りたくない。」

その場にゴロゴロと転がって嫌々アピールをする成人男性。元はと言えばお前が上手くやっていれば私はこんな目に巻き込まれなかったんだがな。じとりと睨みつけて転がる彼を踏みつける。

「君が職務中、女性にうつつを抜かしていた事。しっかりとグルッペンに私は報告する義務がある。」
「Aちゃん、ねぇ欲しいものはある？今なら何でも買うあげるから、ねぇ？」

彼の命乞いも虚しく、そのまま蹴り飛ばす。あんっ！と情けない喘ぎ声に耳が腐りそうだ。こいつ、これでもW国東部教区の教区長だよな？情けないったらありゃしない。それでも、██年前に比べれば成長した方か。全く、もっとしゃんとしてほしいものだが、ちゃんと仕事に取り掛からないから油断を取られるんだ。二度目はない。

　気がつくと日が高く昇っていた。私の記憶の最後では＿＿確か、日が溶け込んだ宵闇の中だった。それ程時間がかからなかったようで何よりだ。この時間帯ならまだ列車は残っている事だろう。今日中にでも帰りたい。なんというか、疲れた。荷物というものはないので、そのまま彼を置いて再び歩み出す。

「チーノ、行くぞ。」
「あ、待ってくださいよ師匠〜！」

この後処理はウツが適当にやってくれるだろう。というかやってくれないと困る。大量の人々の死骸、残されたルティングの信者たち、異教徒。混乱を正しく導くのは神父の役目だ。私ではない。そそくさと立ち去る私へ、背後からウツが呼び止める。

「Aちゃん！」
「何？」

振り向けば、いつになくそのネイビーブルーは揺れていた。そして、少し近づいて私の髪に触れ、艶やかな声が腐り落ちた耳をそっと優しく撫でる。

「……ゾムの事、くれぐれも気をつけてな。」
「言われなくても。」

ふっと、鼻で笑ってその場を後にする。彼もまたお人好しな事だ。乱雑な扱いで、流石に蹴りすぎてしまったが、悪い奴ではない。元より、彼はそういう人間なのだ。どうか私の事など気にせずのうのうと生きて欲しいものだが、そうもいかないよう。申し訳ないことだが。