死霊捜査官【d!】 (ページ25)

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．踊り歩む屍ページ25

自分の愛し子を奪われ、そして見知らぬ男に捕まった様を見てゾムはつまらなさそうにしている。先程切り落された腕は、すっかりと元通りになっていた。そしてぐるぐると肩を回して繋がりを確認する。ネイビーブルーの拘束は緩んでいるようで、不覚を取られた事の方が偶然だったようだ。

　油断しまくっているチーノと寝起きのAを背後に隠し、ネイビーブルーがゆらりと紫煙を燻らせて立った。

「大先生、らしくない。しつこい男は嫌われるで。」
「お前に言われたないわ。」
「まぁ、時間はたっぷりあるし、それ(・・)嫌いやし。今回は見逃したるわ。」
「そうしとき。Aちゃんに殺される前に帰った方がええで。」

　ウツの忠告に首を捻らせた瞬間、ゾムの隣には斧が突き刺さっていた。間一髪、と言った所だろうか。あっぶね、とゾムの口元は自然と弧を描く。

「あぁ、遅かったか。」
「ゾム……どの面下げてここに来たんだ？」

　斧を投げた張本人は、裸足でぺたり、ぺたりとゾムの方へと歩み寄る。先程まで彼の腕の中で抱えられていた愛らしい子羊などではなく、そこにいるのはただの化け物だ。踊り歩む屍だ。もはやそれは人間ですらない、完全に人間ではない。

「さっきまでちゃんと俺のAやったのに、すぐそうやって浮気する。」
「五月蠅い」
「俺ん所はよ戻りぃや。そんなことせんと、なぁ？」
「五月蝿い」
「なんや、その身体になったんがそんなに嫌なん？ええやんか、俺はどんなAでも好きやねんで。」
「五月蝿いと言ってるだろうが！！」

笑みをたたえるゾムの元へAは駆け出す。何も持たず、何も構えず、ただその身1つで殺意を構える。しかし、その足はピタリと動きを止めた。

「Aちゃん、そこまでや。」
「離せウツ」
「蘇生したばっかや、落ち着き。」
「クソがこの女誑し！離せ！！」
「ひどない？ねぇひどない？？」

暴言をわーわー浴びせているにも関わらず、拘束にはかなわない。愛し子が自分の元に駆け寄ろうとしていた所を邪魔されてしまい、ゾムは益々面白くなさそうな顔をしている。

「今回はまぁ見逃したるわ。でも、次は必ず元に戻すからな。A？」

立ち止まっているAの元へゾムは歩み寄る。そして、その顎を持ち上げ、拘束で動けないことを言い事に唇を重ねた。Aが怒りに怒って叫び声をあげる前に、眼前の木賊の姿は消え失せてしまっていた。