死霊捜査官【d!】 (ページ22)

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．キリエページ22

まさに、死霊蠢く巣の中に閉じ込められた気分だった。しかし、彼らを守っていた城壁は崩れ落ちてしまい、まさにどこからでも攻め放題のエリコだった。ロザリオは光を持って飛び込み、軍勢を導く一番星として輝いた。

「〈Kyrie eleison〉(主よ、憐れみたまえ)」

たちまち、死霊の軍勢は光の中へと溶け込んでいく。ウツの詠唱に導かれるがままに。やがて、光が落ち着くと、辺りに残ったのは例の男の散った血肉の後だけだった。

「おい、チーノ！こっちは終わったぞ。いい加減にせぇ！！」
「あっ！ウツ！！こっちも丁度ええで。」
「どこが丁度ええやねん、やりすぎやボケ！」
「ええやんけ！片付けたんやし。……取り敢えず師匠戻してもええか？」
「せやな。頭出して。」

男は、ゴソゴソと革製の鞄を探る。そして生命活動をすっかり停止したAの頭部を出して地面に置いた。うつろな瞳で佇むAに、ウツはそっと手を触れる。

「Aちゃん、終わったで。……〈Lacrimosa 〉(涙溢れる日よ)」

ウツが鎮魂歌の一節を唱えれば、どろりと顔の全てが溶けていく。大地に溶け込んで、そのまま跡形もなくなった、かと思いきやボコボコと隆起する。気持ちの悪い生命の躍動を幾度繰り返せば、やがて人の形を成す。そして、人肌らしきものが整えられていけば見慣れたAの姿が2人の目の前に現れる。全裸で。

「ん、おはようございます。……は、裸？」
「あぁ、おはよ。ごめんごめん着替え用意すんの忘れとったわ。チーノ！」
「ちゃんと僕は用意してますよ、師匠！ほら、着てください。」

言われるがままに、Aは服を着る。さすがに、見知った成人男性の前でも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。

「あ、ありがとうございます。えっと、ウツ様。これは一体どういう……？それに、そちらの青年は？」
「今回は結構遡行が酷いな。」
「そりゃそうですよ。だって久々に1から出直しですからね。」
「安心して、Aちゃん。直に思い出すと思うけど、こっちはチーノ。君の弟子を自称してる連続殺人鬼やで。」
「ちょっと！人聞き悪いこと言わないでもらっていいですか？僕は、師匠に惚れ込んで探偵を目指してるただの弟子ですから！」
「た、探偵？弟子？」

Aは、ひたすらに混乱の中にあった。なぜなら、先程まで自分は……自分は？一体なにをしていたのだろう？何もかも、霧の中に溶け込んでいる気分だった。