死霊捜査官【d!】 (ページ21)

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．大嵐ページ21

立っていられないほどの大嵐の中、ウツは1人いた。足元をぬちゃり、ぬチャリとかつて人間の姿をしていた者が纏わりつく。お前だけ逃げるな、卑怯者、そんな嘆きの声が聞こえた。ネイビーブルーを漆黒の中に引き込もうとするその手に向かって彼は恩寵を与えた。異端者め！そんな怒りに引き裂かれた声だけが残った。

そんなことにも気にとめず、ウツは首元にかけていたロザリオを外し、漆黒の靄の中へ放つ。次第にそれは淡い光を放ち、漆黒を飲み込もうとした。

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Aは地面にグリグリと乱雑な絵を描く。お世辞にも芸術的センスはないが、それはどうでもいいのだとか。

「恐らく、こういう感じだと思う。」
「いやもうちょっと説明くれへん？」
「だ・か・ら！これが院長でこの中に死霊の巣があるんだよ。」
「はじめからそう言えや！！」

ウツ渾身のツッコミが炸裂する。先程からこうなんだよ！と言われながら画伯の展覧会を鑑賞していた所為だ。何故これ程までに絵で説明しようとしたのかは不明だ。

「彼は死霊に傾倒している狂信者だろう。だが、そういうのの多くは従える事を考えているただの人間だ。」
「それを踏まえると……特徴として、ルティングの反死霊救済主義のグループとそっくりや。奴らは従来とは異なった形で死霊に関わった。」
「そう、それが死霊の巣。非人道的として秘跡庁に処罰を食らっていたはず。だが、彼は生きていた。告解を行って尚。」

人らしき何かの真ん中をグルグルと塗りつぶす。まさに、人の中に死霊の住まう巣があるのだと。ただ、そんなのは仮説だと言い切ることもできるが、何を隠そう彼らは今体験している現状を否定出来なかった。

「まさか、中のものを引っ張り出さない限りこいつは不死身なんか…？」
「その可能性は否定できないね。だから、穴を開けるんだよ。」
「……マジで言ってるん？」
「ならエデンとやらで永遠の愛に浸かっていればいいさ。少なくとも、私は君と心中はごめんだがな。」

引き攣った笑みを隠さずに、ウツは彼女を見つめる。彼女は冗談を言ってる訳でも何でもないようで、不安気な彼を見るとニヤリと笑った。