死霊捜査官【d!】 (ページ3)

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．信仰告白ページ3

「勿論、断るが。」
「えー！！？？師匠、ちょっと！！？」

　コンマ1秒も無い即答。カーヌーンの音は辺りに弾け飛び、驚愕して私の肩を掴み激しく揺らす。その振動にクラクラとしているとあーはっはっはっと笑うバリトンが地の底から響いてきた。

「まぁ、お前はそう言うと思ったよ。」
「私がどうして君達に公的な形で協力すると思ったんだ？」
「そうだな、ただの人手不足だけにお前を呼んでも来ない事ぐらい分かっとったわ。」
「他に理由があんのか？」

「〈ゾム〉が、関わっているとしたら、お前はどうする？A･オリエンス。」
「…何？」

　全身の毛という毛が逆立つ気配を感じる。その言葉を聞くだけで今にもこめかみの血管が破裂しそうになる。ぐっと堪えて拳を握り、冷静に思考を巡らすよう脳へと命じた。

「ゾム？…ゾム、なんやそれ。」
「死霊だ、簡単に言えば長年秘跡庁がターゲットとしている奴でな。」

　聞き慣れない単語を反芻するマンダリンの彼を気遣ってグルッペンは当たり障りのない回答をする。この事を知っているのは秘跡庁の中でも極小数の筈なので簡単に口外できないようだ。

「約束やで！！A」

　木賊の瞳の男はこちらを見て微笑み、そのままノイズが走る。もう、これ以上は何も思い出すことが出来ない。在りし日の思い出は今となっては私を暗闇へと閉じ込める枷と変わり果てた。それは、純粋無垢な一人の人間の想いと共に。

彼は今一体何処にいるのだろうか。

もし、彼が過ちを犯し続けているとしたら私は…

　脳がぬるま湯に浸っていく感覚に陥る、しかし表面は凍てつく氷のようでそのギャップに目眩を引き起こす。目の前は暗い、行き着く先は何も無い。ただ、今まで歩いてきた道のりに1本だけ蝋があった。私はまだ灯りが灯っていないその純白に自身の炎を移した。

「やるよ、グルッペン。」

　そう言って膝を着けば彼の黄金は見開かれる。胸に手を当て、慣れない言葉を用いて私は宣言する。

「A･オリエンス、拝命致しました。W国秘跡庁にて死霊捜査官の任を務めさせて頂きます。」

「あぁ…神の名に感謝しよう。A･オリエンス、貴女の召命に神の加護があらんことを。」

　頭の上にがっしりとした大きな手がぐっと置かれる。その祝福と共に天が開かれて神の恩寵が私に降った。ふと後ろを振り返ればマンダリンの瞳が揺れている。そんな彼を見てふふっと微笑んだ。