死霊捜査官【d!】 (ページ20)

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．猛獣の輪舞曲※ ページ20

「正体現したね…チーノ！お前は外に出ろ。Aちゃんを取られんなよ！！」
「はい！！」

男は、ウツの声と共に窓ガラスを蹴破った。そして、一目散に走り出す。だが、彼の行く手を阻む者があった。それは、猟銃や鉈を携えている病人たちであった。彼らは、例の狂信者に唆されたのだろうか、非常に虚ろな目でこちらを見ている。

「うわっ、ゾロゾロ出てくるやん。だるいな〜」

今回ばかりは何しても許されてくれ、そう願いながら近くに転がっていた斧に手をかける。精気のない眼で襲いかかるものを1人、2人。銃口を向けるものはその構える腕ごと切り落とされ、そこから溢れ出る絶叫がこの場を彩る美しいBGMになる。だが、男は気に食わなかった様で、その口に目掛けて斧を振り下ろす。

「うるせぇな、黙っとけ。」

上顎でだるま落としをすると、美しいBGM＿＿＿男にとってはノイズであるそれは止まった。そんなことにもお構い無しに男はずるりと中のものを引き出し、掴んで適当に放り投げると運良く近くにいたものに当たった。それが何であるかを悟るとその者は恐怖に慄き、嘆いた。不思議な事に、襲い来るものは皆恐怖心に苛まれながらもその場から逃げることはしなかった。と言うよりは、逃げる事が出来なかったのだろう。精神が汚染されていようとも、本能はアラートを掻き鳴らしていた。だが、その甲斐虚しく彼らの足は立ち止まることを知らなかった。

「アッハッハッハッハッ！！！最高やん！！！」

背後から襲い来る者に、男は前方に転がる鉈の先をお見舞する。流れる赤に取り込まれながら男は高らかに笑っていた。暫くするとそこに立っているのは1人だけになった。だが、流れる赤は留まることを知らない。もはやそこに師匠との約束等は無い、あるのはただ快楽だけである。

眼前の死霊と睨み合う中、遠巻きにウツは凄惨な現場を目撃する。あいつの方がよっぽどバケモンやな、なんて思う程だった。後始末が面倒になりそうだと、少し先の未来を憂う暇は無いもののそう思わずにはいられなかった。

「Aちゃんはほんまに猛獣使いやな……こっちをさくっと済ませないと。」