死霊捜査官【d!】 (ページ18)

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．幸いな人※ ページ18

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「……あっぶなぁ〜」

辺り一面を包み込む白。それは男が胸の内に潜ませていたロザリオから放たれていた。目を焼きつけるほどの純に院長先生はうっと立ちくらみ、1歩後退りをした。そして、男を背後から包みこもうとしていた漆黒は、霧のように辺りに散っていった。深淵から這いずり出したグッドラックは、すぐに身体を立て直す。

「師匠ほんまにナイスやな。ガチで今持ってかれるとこやったわ。」
「くっ…祝福か！」

歯をギリギリと食い縛り、院長先生―そう呼ぶのは今や相応しくない、それはただの盲目的な信者である―は眼前の男を睨みつけた。そんな事を気にもとめず、男はブローニングM1900を構えて撃つ。確実に肉体を捉えた筈であった。そのまま彼の愛する赤が流れる筈だった。だが、男が捉えたのは漆黒である。銃弾は、黒い塵に姿を変えて見る形もなくなった。そして、先程逃した獲物を追い求めるように漆黒はマンダリンを飲み込もうとする。

「わっ、あぶね！クソっ、しつこいな。」
「しぶといですね。いい加減、その空っぽの魂を我が主へと献上しなさい。」
「誰が空っぽやって？？」

苛立ちのままに男は何発も撃つものの、それは盲目的な信者に届かない。迫り来る漆黒に防戦を強いられ、次第に男は追い詰められていく。

(……ほんまにどうにかせんと、でもどうする？この調子じゃ証拠を集める前に地獄行きや。だからといって逃げても町の連中に見つかれば私刑にかけられておかしくない。師匠、早く……)

「くっそ……」
「どうやら、その祝福は１回限りのようですね。神からの恩寵も何も無い貴方に救いの手を差し伸べているのです。我々と共に来なさい。そして、あの方の礎となるのです。」
「あの方？」
「それは……ぐはぁっ！？」

特に男の銃弾が捉えた訳でもないのに、眼前が血に包まれる。何が起きたのか不明だが、見たところ信者は内側から破裂したようだ。腸がちぎれ、そして全てを支える骨は見る影もなく砕けているようだ。肉片なのか、血なのか分からないものが男の眼鏡に飛散する。

「え？」

暫くすると哀れな信者の血溜まりが隆起し、そして人の姿と成した。血の中から生まれたのは男のよく知る人物の顔であった。

「おっと…お取り込み中やった？」