死霊捜査官【d!】 (ページ16)

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．回顧録ページ16

「ゾム様！」

背後からじとりと伸びた木賊の影。

あちこちで小セクトを開いていた神父達がこちらを見てざわついている。それは、突如として現れた異端の神父の登場によるものだろう。だが、彼はつぶやきを気にもとめず、眼前の少女にずしりと体重を預ける。急に訪れた重量感にAは耐えきれず身体を蹌踉めかす。

「な、なんです？」
「……別に様つけんでええ言うたのに。」
「しーー！！本庁では補佐官が神父を呼び捨て等できません。」

あ、そっかと呟く彼にAは深い溜息をもらす。悪気のない(時と場合による)、あくまで純粋な上司の言動に彼女はほとほと手を焼いている。何を隠そう、今の今まで彼女は行方知れずとなったゾムを探していたのだから。

「それはそうと、どこに行ってらしたんですか？」
「え、腹減ったから飯食ってきた。」
「飯……？？」

悪びれる様子もない上司にAは呆れて言葉もでなかった。ちなみに時刻は現在朝の4時半。どこの店も空いてないというのに一体彼は何を食べてきたのだろうか。Aの脳裏にそんな疑問が過ぎる。まぁ聞かぬが吉だろう、それくらいの知性は持ち合わせていた、

「なんや、ゾム……Aちゃんとえらい仲良しやな。」

ネイビーブルーがじとりとした眼差しで異端の彼を捉えた。思わぬゲストの登場に虫の居所が良くないようだ。

「仲良し……？」
「せやで！俺とAは仲良しや。」
「ちょ、ゾム様？そのような事は軽々しく口にしないでと何度も！」
「別にええやん。なんや、ほんまに細かいなぁAは。」
「私が悪いみたいに言わないでくれます？」

やいのやいのと言い合う彼らを尻目に、ウツは、ふぅと転がしていた煙を吐き出した。突然、Aは甘く、濃い煙の中に飲み込まれた。そして、勢い良く入り込んだせいか、彼女はその煙が奥まで染み入ることを拒絶した。

「ゲッホゲホ…」
「仲ええことは言いこっちゃ。でも＿＿＿」
「え？」

ウツは、隣の木賊の彼に聞こえないように彼女へと耳打ちした。その言葉にAは目を見開いたが、それを追求する前にネイビーブルーは立ち去ってしまった。

「俺、煙草嫌いやねんけど。」
「ヘビースモーカーの様ですね。災難なことでした。」
「見た目も胡散臭いやっちゃな。」

Aもその事は否めなかった。ただ、彼の言葉が彼女の胸に引っかかっていた。しかし、その時はそれ以上考える余地はなかった。