死霊捜査官【d!】 (ページ15)

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．回顧録ページ15

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見渡す限り果てしなく続く黒の世界。普段なら物々しいこの廊下も今日ばかりは少し騒がしい。秘跡庁で大きな会議があるとのことで普段は地方に派遣されている神父も本庁へと戻ってきているのだ。
久しぶりに同胞と出会う喜びに充ち、立ち話があちこちで盛んに行われている。様々な話が飛び交ったいる中で1人その輪に入らない神父がいた。名をウツという。彼は、このような交流を好まない為に端の方で煙草を軽く蒸かして空いた時間を過ごしていた。ふと、彼の視界の中に自分と同じ様に時間を弄んでいる人物がいることに気づく。彼女は、腕の中に書類を抱きしめて辺りを見渡し、そのまま居心地の悪い空気にはぁとため息をついていた。ウツは、それが例の補佐官であるとすぐに気がついた。

「君は……Aちゃんやね？どうも、初めまして。ウツです。」
「お初にお目にかかります。Aです、よろしくお願いいたします。」

見かけにそぐわず凛とした声だとウツは感じた。少女の面影を残した初々しさ溢れるAは、彼の方を見てぺこりとお辞儀をする。

「今、ひとり？」
「はいそうなんです。はぐれてしまって……」
「まぁあいつのことだからどっかに飯食いに行ってるかサボってるかやろうなぁ。」
「それが困るんですよ……！」
「でも噂じゃだいぶ躾がなってきてるらしいやん。こういうのに来たのもめっちゃ成長したと思うし。補佐官としてちゃんとやってる証拠やと思うで。」

頭を軽くポンポンと叩けばAはびくりと驚き、目をぱちくりさせる。そして、どこか腑に落ちていない様子であったが、褒め言葉に異議を唱えることはしなかった。ウツはと言えば、当たり障りのない笑みを携えており、その背面を探ることは出来ない。だが、彼を良く知る人物からすれば、Aに欲を持って接していることなどひと目でわかるだろう。

「いやぁ〜それにしてもえらいべっぴんさんやなぁ。こないな補佐官さんがおってええなぁゾム(・・)は。」

露骨な容姿贔屓にAはあははと苦笑を漏らすことしか出来なかった。彼女にそのような物言いで近づいてくるものは少なくはない。だからといってあしらい方が上手という訳でなかった。流されるままに、今度ご飯行こうなどと誘われてしまう。彼女がどうしよう、とわたわた不安に感じていると、音もなく背後から青年が声をかける。

「A、そんな大先生のお世辞相手にせんでええで。」