死霊捜査官【d!】 (ページ11)

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．ネイビーブルーの疑義ページ11

「いやぁ～無事でよかったわ、Aちゃん。」

　目の拘束がそっと外されるとそこに映ったのは追い求めていたあの活力の欠けたネイビーブルー、ウツこと大先生だ。彼が見つかったからか、命の危機が去ったからかはさておき安堵感からほっと溜息をつく。

「大先生、そっちの方こそ。てか一体これは…」
「ま～じで分からへん。〈恩寵〉でとりあえず足止めしとるから取り敢えずこっから離れよか？」
「そうだな、行こう」

　私は微動だにしない黒い塵の塊を一瞥してその場を後にする。通常の死霊は神父の〈秘跡(サクラメント)〉の執行によって神の御許に行くとされている。だが、これまでの格闘から察せられるようにあれには効かなかったようだ。大先生が授かった恩寵、即ち〈精神干渉〉によって先ほどの黒い塵の塊は動きを止めた。死霊ではないが心、精神は存在する。死霊から派生したもの、その根源が何処にあるのかは分からない。

　 ■

「此処なら大丈夫やと思うで。てか、Aちゃん。グルちゃんに言われて来たん？」
「あぁ、そうだが。」
「いや、すまんな。大分時間かかってもうて、しかもこっち来てから連絡もできんくなってもうたし。」
「大先生、ちなみに報告が途中になっているという事だったがこの現象についての調査の進捗は？」

「…進捗…6割です。」

　私の問いに対してバツが悪そうに彼は答えた。私はその言葉を聞くや否や彼に飛び蹴りをお見舞いする。進捗６割、それは彼の常套句で本来は進捗０割に等しいのである。彼に出会えれば何かしら分かるかもしれないと思っていた過去の己を殴りたい。なんて浅い考えなんだ、頭を抱えて苦しんでいるとあのぉ～と苦笑しながら口をはさんできたので思い切り睨めば情けなくヒィッと悲鳴を上げる。

「なに」
「あっ、あのですね…」
「早く言え」
「あっ、ハイ。えっと…」

　彼は頭の中の隅から隅までを確かめるように顔を顰めている。答えを急かすのもよすべきだとそれ以上の追及を抑えて彼から出る言葉を待っていると、ぽつりぽつり彼は興味深いものを落としていった。

「あの病院の院長、俺どっかで見たことあるんよ。数年前、確かベクテン城教会の前で提題を張り出してた…今と名前ちゃうねんけどな、顔だけごっつ似てんねん。異端認定された反死霊救済論グループのM．ルティングと。」