死霊捜査官【d!】 (ページ1)

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file1．アンデッドは蘇るページ1

骨が腐り落ちていく。既にそこには肉はなくあるのは哀れにも白い化粧を施されたフレームワークのみだ。いずれは土中の微生物が我が身体を食い物にして栄養素を生成し、世界を循環させていく。それもまた悪くは無いだろう。

「師匠、起きてください。」

カーヌーンの弾ける音が心地よく耳を撫でる。すると一筋の黎明がカーテンの隙間から差し込んで強制的に私の目に光を宿らせた。枯れた骨は肉を肥やして目覚めのときを迎える。歓喜の声を上げ、私はその身を起こした。

「おはよう、今日もいい天気だね！」
「おはようございます、また一段と早い目覚めで。」
「そうそう。だって今日はいい天気になると思ったから。」

マンダリンの彼は呆れつつキッチンの方へと向かった。今日もあの撲殺された卵が出てくるのであろうか？ジュージューと油が跳ねる音と珈琲の香りが漂ってくる。鼻に着いた腐敗臭を取るかのように顔を洗い服を着替えてシェフのご馳走を頂くことにした。

「あっもう少し待ってくださいね〜」
「見事に今日も撲殺されてるね、恨みでもあるのかい？」
「芸術的と言ってください、師匠。」

準備で忙しい彼を他所目に、椅子にかけて珈琲を飲みながら今日の新聞を読む。どうやらミドル川で起きた男女首無心中のことで紙面はもちきりのようであった。それも無理はないだろう。

「出来ましたよ〜」
「おっ！それでは頂こう。」

　食卓に並べられたレタスとトマトのサラダ、街角のパン屋で買ったトースト、珈琲、そして…

「この撲殺卵、相変わらず美味いな。」
「でしょ！いやぁ〜流石師匠、見る目が違いますね。」
「なんで卵料理だけ上達しないの？」
「さぁ？」

　マンダリンを細めてニコリと彼は笑う。本気なのか、態となのか、彼の真意は何時だってその瓶底眼鏡に覆われてしまっているのだ。はぁと溜息を一つ落とせば、あっと彼は思い出したかのように何かを取り出す。

「そういえば、あそこから手紙が来ていましたよ！」
「依頼か？まぁ巷で色々騒がれてるしな。」
「いや、違います…あぁでも関わりはあるかも知れない。」

　本来仕事の封書を弟子が開けることは信頼関係を破る行為かもしれないが私はその点を一任している。彼が私の前に差し出したそれは黒の蝋で封をされており、その上からマルタ十字が深々と刻まれている。嫌でも分かる、あいつらの象徴だ。

「見ればわかる通り秘跡庁から、死霊捜査官の任命についてです。」
「はぁ〜〜〜〜〜〜〜？？」