拾. 思い出す ページ10
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「……し、しげる!!」
しげると呼ばれたその子は、その子の家へとつくと、外を探し回っていたのだろう、土に汚れた、兄らしき人へと駆け寄って行った。
振りほどかれた手が、虚しく体の横に落ちる。
兄ちゃん兄ちゃんと泣きながら謝るしげるも、それを慰める兄も。
とても素敵な、絆。
ふと、隣に立つ炭治郎が、細かく震えているのに気がついた。
動揺しているのだろうか、それでも、目の前の兄弟を見る目は、とても優しいもので。
「……よく、頑張ったな」
鬼に両親を殺され、それでも必死に弟を心配するその姿は、鬼である自分には眩しく、そして羨ましいものだった。
「俺が、悪い鬼は斬ってくるから。
夜は外に出ちゃ駄目だぞ。」
兄ちゃんは、弟を守るんだ。
しげるだって、兄ちゃんを支えてあげるんだぞ。
兄弟は、家族とは、そういうものだ。
お互いを励まし合い、支えあって生きていく。
大切な人を、守る為に。
Aの手を優しく握った炭治郎は、そのまま家を後にする。
鬼を、斬りに行くのだろう。
たくさんのありがとうを背中で受け止めながら、二人は再び、町へと向かって行った。
……2人の声も聞こえなくなった頃、ふと、炭治郎が立ち止まる。
わ、と声を上げるも、炭治郎に手を引かれていた勢いそのままに、炭治郎の背中に額をぶつけてしまう。
ど、どうしたの炭治郎?
大丈夫?
よくよく考えてみても、先程から炭治郎の様子は間違いなく普通じゃなかった。
どうしたのだろう。
「…………茂は
……俺の、弟の名前でもあった」
ヒュッ、と息が詰まった。
何かに耐えるように話す炭治郎を、見ていられなかった。
炭治郎は、鬼に家族を殺されたのだろう。
……なら、どうして?
鬼である自分と、一緒にいてくれるのだろうか。
本当ならば、憎むべきはずの相手なのに。
それでも、穏やかな目で自分を見つめる貴方の目は、どうして優しい色を宿しているの?
太陽の日の光の温かさは、ずっと昔に感じたきり忘れてしまっていた。
それでも、炭治郎はそれよりもずっと、暖かい。
……なんとなく、そんな気がした。
貴方の隣は、酷く心地がいいから。
怖いと、感じてしまうほどに。
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くずを - 好きです!次の更新待ってます! (2020年1月11日 20時) (レス) id: f3d3ee67c0 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:ちよこ | 作成日時:2019年8月29日 23時