日和の鬼【鬼滅の刃】 (ページ2)

今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:60,282 hit

弐. 鈴の音と共にページ2

･

｢(ゆ、油断した……)｣

その日、炭治郎が単独任務を終え、そのまま蝶屋敷へと帰ろうとしていた時の事。

ふと香った、人の血の匂い。

誰かが、怪我をしているのかもしれない。

急いでそこへ向かえば、人の血の匂いと、少々香る甘い藤の花の匂いがした。

……こんな場所で、藤の花の匂いがするはずが無いと。

その時思い出したのは、あの日の珠世の話。

人を食わない、人を助ける鬼の話。

……その場に着いてみれば、居たのは、木に寄っかかるように座っている、無傷の人。

先程までは確かに、血の匂いがしていたのに。

｢大丈夫ですか｣

意識を取り戻したその人は、薄れていく意識の中で、年頃の若い少女に出会ったと言う。

ちりんとなる鈴の音と共に現れたその娘が、自分の手当をしてくれたらしい。

｢不思議な話、ですね｣

一人で帰れるよというその人が、山を下りていくのを静かに見守る。

｢雨で土がぬかるんでます、気を付けてくださいね！｣

……なんて言ったのは自分なのに、なんと言うか。

｢(情けないなぁ)｣

土に足を取られ、ちょっとした崖から滑り落ちてしまった。

足を捻ったのと、少し頭を打ち付けた。

背負う箱から出てきた妹は、ふんふんと言いながら、自分を心配するように周りをうろうろとしている。

｢はは、大丈夫だよ禰豆子
ちょっと足を捻らせただけだ。すぐ血も止まる｣

……それに、もう時期夜が明ける

会えなかった、と残念に思う。

確かに、この場所に居るはずなのに。

そのまま無防備に寝息を立て始めた兄を、妹は静かに見つめていた。

──────────ちりん

優しい、鈴の音が聞こえた。

･