Kissを止めないで【ars S.O】 (ページ29)

今日:3 hit、昨日:0 hit、合計:89,103 hit

29.ずるいキスページ29

・

「俺はこうしてるだけでじゅーぶん」

大野くんは私を抱きしめながら、震えがおさまるように、背中をトントンとさすってくれた。

まるで赤ちゃんをあやすみたいに

ゆっくりと…優しく。

だけど、そうされればされるほど、なぜか胸が苦しくなってきて、

しまいには大野くんにぎゅっと抱きついたまま泣き出してしまった。

「マジか…どした」

「…」

「わかったよ、しないから泣くなってぇ」

「そうじゃないの…」

「へ？」

「多分、大野くんに嫌われるのが怖いの…」

「は？」

「つまんないって思われそうで…」

「はあ？」

「だって大野くんはあんなにキスが上手くて…なのに私ってばすんごく普通で」

「バーカ」

食い気味のバーカに、顔を上げると眉毛を下げた大野くんに見つめられた。

「わかった。じゃあ、口、少し開けて」

「え」

「いいから、ほら」

大野くんに言われるまま、少し口を開けると、大野くんの顔が近づいてきて、

舌をするりと入れられた。

そして、色っぽい顔で

「俺についてきて…」

と言われた。

大野くんの舌の動きに必死に合わせる。

大野くんは、

時には舌先を吸ったり

時には絡めたり、

あえて息遣いを聞かせたり、

ほんとにずるいキスをする。

もう少しこうしていたい、というタイミングで唇を離しては

「好き…大好き」

と囁いてみたり、

言葉で、

キスで、

骨抜きにする。

どれくらいそうしていただろうか。

突然、ハァと息を吐き出した大野くんが

「俺も必死なの…」

と私の頬を撫でた。

「Aのこと…気持ちよくしたくて」

「大野、くん…」

「いいとこ見せたくて、必死なの」

気づけば震えは止まっていた。

「私で…いいの？」

大野くんを見つめながら訪ねる。

すると大野くんは

「Aがいいんだよ…」

と私をベッドに押し倒した。