Kissを止めないで【ars S.O】 (ページ18)

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18.やめとくページ18

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大野くんの最寄駅で降り、家まで送る。

その間ずっと

「へーきだって…」

と強がる彼の腕を支えて歩いた。

ピンポーン…

玄関のインターフォンを鳴らす。

…

反応なし。

どうやら留守らしい。

大野くんから鍵を借りてドアを開け、振り向くと、足元に大野くんがしゃがみ込んでいた。

「大野くん！！」

「ちょっと…クラクラして…」

「頑張って！立てる？」

大野くんの腕を自分の肩に回して、担ぐようにして2階へと運ぶ。

突き当たりの部屋の扉が開いていて、中が見えた。

思いっきり男の子の部屋だったから、何も聞かずに大野くんをベッドに座らせた。

「ほらっ、横になって」

足元に丸まっていた布団をバサッと雑に頭までかけて

「何かいる？コンビニ行ってくるよ」

と声をかけると、布団の下からニョキッと腕が伸びてきた。

手のひらを弱々しく握ったり開いたりしながら、布団の中で何かボソボソ言っている。

よく聞こうと

「ん？」

としゃがみ込むと、パッと二の腕を掴まれた。

「わっ、」

続いて頭がスポッと布団から出てきて、熱でウルウルした目の大野くんが、私を見つめながら

「ここにいて…」

と言った。

え？

ここにいて…って言った？

頭が真っ白になる。

「え、え？」

「俺が眠るまで…こうしてて」

腕を掴んでいた大野くんの手がするりと降りて私の手を握る。

「ちょっ、家の人帰って来ちゃ、」

「だいじょーぶ…変なことしないから…この状態じゃできねぇし…ふふ」

「い、や…そういうんじゃなくて」

混乱して立ち上がろうとしたら、大野くんに強めに手を引かれて、顔がグンと近づいた。

その距離、30センチ。

どうして良いのかわからなくて、大野くんの顔を見ていると、大野くんが突然、ふっ、と小さく笑った。

「きょうはやめとく」

「へ？」

「うつすとわりぃから」

「へ？なに言って、」

「おやすみ！」

そう言って、布団に顔を埋めてしまった大野くん。

しばらくすると寝息が聞こえて来たから、そっと握っていた手を離した。

布団からにょっきり出た大野くんの手を見つめる。

サラサラした手。

指が長い。

冷えるといけないから、その手を布団の中にそっと戻す。

そして、彼の匂いのする部屋で、彼の寝息を聞きながら

“きょうはやめとく”

の言葉の意味を考えていた。