Kissを止めないで【ars S.O】 (ページ17)

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17.ごめんページ17

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大野くんが発熱したから、送ってやってくれないかとヨーコさんから携帯に連絡があったのは、遅めのランチに出ている時だった。

「え！大丈夫なんれふか？」

口の中にパストラミサンドの最後の一切れを押し込みながら、大野くんの様子を聞く。

「なんか、熱、滅多に出さないとかでフラフラなのよ。Aさん、おうち近くでしょ？悪いけどきょう、もう上がっていいから、送ってってあげて」

ヨーコさんがそう喋り終わる頃には、口の中のパストラミサンドはすっかり胃の中に収まっていた。

「わかりました。今、戻ります」

残りのカフェオレを勢いよく流し込み、カバンをひっつかんで、5分の道のりを3分で戻った。

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午後3:00の地下鉄は、それほど混んでいなくて、大野くんと並んで腰掛けても、まだ座席に余裕があった。

「大丈夫だって言ったのに」

マスクをした大野くんが、赤い顔をしながら文句を言う。

「念のためだよ。何かあったら大変でしょ。ちょっと目つぶってたら？」

そう言うと大野くんは大人しく目を閉じた。

実は目を閉じてもらったのにはワケがあった。

「あのさ…そのまま聞いて。さっきはごめん。自分でもなんであんなこと言ったのか…本当にごめん」

弱っているのに乗じて謝るって、ちょっと卑怯な気もしたけど、そうでもしないと、この先、ずるずると謝る機会を逃してしまいそうな気がした。

「大野くんがあまりにも人気者だから卑屈になっちゃったのかな。はは」

「…」

「嫌な気持ちにさせたよね。ごめん」

「…」

私の言葉に大野くんはなにも答えず目をつぶったままだった。

けど、次の瞬間、私の肩に大野くんの頭がコトンと乗っかって、心臓が飛び出しそうになった。

目だけをそちらに向けて大野くんを見ると、大野くんは目を閉じたまま

「ちょっと…寝ていい…？」

と言った。

「いいよ…」

「さんきゅ」

大野くんの体温を、匂いを感じる。

サラサラの髪が頬にあたってくすぐったい。

胸の奥が疼く。

だけど、そんな状況でも、心のどこかで、どうせ姉と弟にしか見えてないんだろうな、と切なく感じている自分がいた。