Kissを止めないで【ars S.O】 (ページ13)

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13.クリームソーダページ13

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脱衣所で服を脱ぎ、着ていたネルシャツに顔を埋めてみる。

微かにタバコの香りがした。

お母さん、鼻よすぎ。

にしても、あいつ、未成年のくせにタバコ吸うのか…。

大野くんの匂いを体から消すように、勢いよく熱いシャワーを浴びた。

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次の日、10:00ちょっと前に出社すると、大野くんは既に社長から頼まれたイラストを描いていた。

デスクに近づきながら

「おはよ」

と声をかける。

ちらと目だけこちらに向けた大野くんは、昨日あったことなんて忘れたみたいな顔で「おはよ」と答えた。

あんなにはしゃいでたのに、すましちゃって。

精一杯かっこつけてる大野くんが愛おしかった。

ジャケットを椅子の背もたれにかけていた時、近づいてきた社長に突然声をかけられた。

「Aさん、悪いんだけどこれから、したまちナビの取材行ける？」

「あれって納品しませんでしたっけ？」

「そうなんだけどさ、編集部の人が新しくできたカフェも載せたいって言い出して。あの角に出来たとこ。わかる？」

「あー！こないだ前、通りました。まだ行ってませんけど。担当の方に話は通ってるんですよね？」

「うん、Aさんが行くって言ってある」

「わかりました。行ってきます」

再びジャケットを羽織り、一眼レフのカメラを首にかけ外に出た。

事務所は古いマンションの一階で、エントランスなんてしゃれたものはなく、一歩外に出ればそこはもう通りだ。

春の風が心地よい。

胸いっぱいに空気を入れようと、鼻から大きく息を吸い込む。

と、誰かが横に並んだのを視界の端に捉えた。

「うわっ！！びっくりしたぁ」

大野くんだった。

物音もさせず、気づいたら横に立ってるって…

お前は忍者か！！

「俺も行く」

「社長良いって？」

「うん、勉強して来いって」

そっか。忘れてたけど、この子、ワケアリなんだった。

好きなことでガス抜きさせるのが目的だもんね。

「したまちナビさんは、この街のタウン誌作ってる会社でね」

「うん」

「私はイラストの他に簡単な記事書くのも任されてて」

「へぇー」

「これから新しくできたカフェの取材に行くから」

「へーい」

目的地であるカフェに到着し、とりあえず何か注文してから担当者を呼ぼうということになった。

「大野くん、何にする？」

「…ソーダ」

「え？」

「クリームソーダ！」

可愛すぎて吹き出した。