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包みを引っ張って開けて口に入れると、日本のものよりも甘い外国のチョコレートの味。


今の空っぽな心には、この甘すぎるくらいの優しさが沁みる。






『……っ、』






自分からフったくせに、喪失感に涙が止まらない。


ずっと我慢していたのに、どうしてこんなところで泣いちゃうんだろう。


本当に情けない。弱い自分が嫌になる。




メイク道具も一式家に置いてきちゃったし、ポーチにあるのはお直し用のフェイスパウダーとリップくらい。


明日の仕事どうしよう。


コンビニにあるコスメを買い込んで、何処かのホテルに泊まる?


でも服は家だから、何処かに買いに行かなきゃダメ?


もうそこまでして会社に行く気にもなれない。


残業してまで終わらせた資料、明日締切だから提出しなきゃいけないのに。


何もかも、嫌になってきた。





「……お待たせしました」





店員さんの声にハッとする。


テーブルに出されたココアと、プリンの上に前頼んだ時はなかったものがのっている。





『生クリーム……?』


「甘いもの、苦手でした?」


『いえ、好きです、けど』


「甘いもの食べて、今だけでも嫌なことは忘れましょう」






私が泣いているせいで、この店員さんにも気を遣わせて。


……ほんと、迷惑な人間。





"何かございましたらお気軽にお呼びください"と詮索はせずに、戻って行った店員さん。


このお店の雰囲気が好きだったけど、それは店員さんやお客さんの人柄もあるのかもしれない。




海人は、稀に私が泣いた時

"何泣いてんの?そんな弱くないでしょ"

"泣くなよ、ウザいな"

そう声をかけてきて。


今考えたら、どうしてあんな最低な男を好きになったのか分からない。




出会った頃は、もっとずっと優しかった。


甘えられて、求められるのがよかったのかな。


必要とされている気がして、自分にも存在意義があるんだって思わせてくれたから好きになったのかな。


確かに好きだったはずなのに、どこが好きだったか思い出せない。


こうして時間を無駄にしてきた自分が憎い。




涙を流したまま飲んだココアは、あまじょっぱかった。

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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時

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