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「俺もなにかプレゼントあれば良かったんだけど」
『お気になさらず。このリングも返そうと思ってるので』
「え、ダメだよそんなの」
『どうしてですか？』
「男はね、返されるくらいなら知らないところで捨ててもらった方が嬉しいもんだよ」
『え？』
「まぁ、くれたのが男かなんて知らないけど。俺だったら返されたくないなぁって」
『……でも、』
「別に急がないだろうし、しっかり悩んだらいいと思うよ。普通に気に入ったなら見栄とか意地とか張らずに使っていいと思うし」
こういう時に男性からアドバイスが聞けるなんて貴重だな、なんて思いながら箱のフタを閉じた。
そうだよね、どうせ別れてるんだし。
どうするかゆっくり考えてもいいんだ。
松倉さんとふたり、洗面所で並んで歯を磨く。
私がソファーで寝る準備をしてブランケットを広げていると、松倉さんに腕を掴まれる。
「ベッド行こ」
『え、私もですか？』
「一緒に寝るんでしょ？」
『いや、それは時と場合によるというか。別に今日は……』
「じゃあ今日は俺の事情で"時と場合による"ってことで。行こ」
『あの、』
「Aちゃんだけ時と場合によるなんて、ズルいと思わない？」
どうしてか、松倉さんのお願いに弱い私はすぐに負けてしまう。
そのままベッドに寝転がる体制になって、手を引かれて私も隣に寝転ぶ。
松倉さんに背を向けると、後ろから伸びてくる手。
『松倉さん、暑いです』
「でも、Aちゃん寝る時のハグは嫌いじゃないんでしょ？むしろ、」
『別にハグが好きとかじゃないです』
「ふーん」
手が離れたと思うと、今度は頬を触ってくる。
「ねぇ、こっち見てよ」
言われるがまま、寝返りをうって向かい合わせになる。
片手で抱き寄せてきて、もう片方の手が私の髪をいじる。
「んふっ、ロングも似合ってる」
『髪いじるのって楽しいんですか？』
「楽しいっていうか、やっぱ男にはあまりいない長さだから気になる」
擽ったくて身をよじった時、松倉さんの手が首で止まった。
「……これ、なに」
低い声で呟いて トントン、と触ってきた場所。
海人に付けられた痕のところだ。
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作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
