33 ページ33
.
「俺、ここ数日でAがどれだけ家事を頑張ってくれてたのか身に染みてわかった」
『だからあの時、私お母さんじゃないよって言ったでしょ？』
「うん、片付けてくれるのが当たり前だって思ってた。本当にごめん」
『分かってくれたのは嬉しいけど、今更謝られても困る。もう私たち終わったんだよ』
「俺、これから頑張って片付ける。家事だってやれることは俺もやる。」
『本当に？』
「俺が約束は絶対に守るタイプだって知ってるでしょ？」
『それは知ってるけど』
「ねぇ、やり直そうよ」
久々に聞く、海人の泣きそうな声。
『……その努力は次お付き合いする子にしてあげて』
「考え直してほしい。俺Aじゃなきゃ嫌だ」
『そんなこと言われても、』
「俺、Aに沢山酷いことしたり、酷い言葉掛けたりしたと思う。本当にごめん」
今更。
今更すぎるよ。
「Aが何回か家を出て行った時、俺から連絡出来なかったのは、謝ってもAの気持ちは変わらないって思ったからだったんだよ」
『それでも、連絡してほしかった。追いかけてきてほしかった』
「ごめん」
『私の方こそ、話し合わずにすぐ逃げて何度も海人のせいにしてごめんなさい』
「いいよ、そんなの好きだからいくらでも許せる。」
『海人……』
「なぁ、俺たちやり直そうよ」
目から伝わってくる本気の気持ちに、なんて返そうか悩んでいるうちに
"……印鑑、取ってくる"
と海人はやっと抱きしめてきた手を離して、リビングに取りに行ってくれた。
戻ってきて渡してくれたものは、印鑑だけなのに何故か紙袋に入れて、中が見えないようにテープで止めてあった。
『ありがとう』
「ん。あのメガネかけた店員のとこに帰るの？」
『うん』
「……やっぱ無理」
肩を掴まれて、首に顔を埋められる。
『ちょっ、海人、』
首に吸い付く感覚。
……最悪、痕つけられてる。
「ついた」
『こんなに見えるようなところにつけないで』
「見えるとこじゃなかったらいいの？」
『そうじゃない。なんでこんな事するの』
「好きな女が俺以外の男の家に住んでるとか無理だし。こうしたらこれが消えるまでは俺の事考えてくれるかなって」
海人の考えていること、分からない。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 314人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
