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『ん……』
目が覚めて、伸びをしようと身体を動かそうとすると、思うように動かない。
抱きしめられたまま寝ていたみたいだけど、しっかり足が私の身体を挟んでいる。
少し顔を上に向けると、思った以上に顔が近くて、もう少し動いたら松倉さんの唇がおでこに当たりそう。
『ま、松倉さん』
「ん……?あ、おはよ」
『あの、近い……です、』
「言ってきたのはAちゃんでしょ」
『えっと、熱ある時なんて正気じゃないっていうか、あの』
「まだ熱ある?顔赤い」
『……っ』
手で頬を撫でる。
やっぱり、メガネをかけていない松倉さんには慣れなくてドキドキする。
「んふっ」
『あ、の……』
言葉につまる私の顔に、あと数センチでくっつきそうなくらい近い距離。
息をするのを忘れる。
頬からスルスルと顎に手が移動して
「この前まで彼氏いたのにそんな反応なら、すぐ熱ぶり返しちゃいそうだね」
親指で私の唇を撫でたり、押したり、唇の少しの隙間に指を差し込んできたり。
そんなことしてきたらこっちは喋れるわけなくて、口を開かないように黙り込んだ。
「挟まれた」
唇の隙間に少し指が入ってきたタイミングで、それ以上開かれないように口を固く閉じると、松倉さんは楽しそうに笑う。
目で訴えても、ただただ優しく笑うだけ。
……この人、オネダリも上手だけど、きっとこういうことに慣れてる。
じゃないと、こんなことしない。
ずっと睨み続けていると、松倉さんは少し身体を起こして
私の耳元で、ふぅーっと息を吐いた。
『やっ、』
「……ほんと、心配になるくらい純粋無垢」
やっと身体が離れる。
それはそれで、隣から体温が無くなるのは寂しい。
『松倉さんのバカ』
そう言うと、また距離が縮まる。
「Aちゃんの反応が可愛いのが悪い」
距離は近いけど、キスはしない距離感。
余裕な素振りを見せてくるのが悔しい。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時