13 ページ13
.
駅のトイレに設置されている着替え台を使って着替える。
会社のロッカールームは広いから、そこにキャリーケースとトートバッグを入れておけば大丈夫だよね。
まだ通勤するには早い時間だから、誰にも鉢合わせないだろうし。
「A、おはよ」
『……おはよ』
そう考えているうちに、会社の前で鉢合わせてしまったのは、別の部署で働く同期の松田元太。
「こんな早いの珍しいな」
『そっちこそ、誰も出勤してない時間にいるんだね』
「たまたまだよ、昨日の仕事残ってたから。気になっちゃって早く来た」
まぁ、上司に見つかって絡まれるって想像したら、鉢合わせたのは元太でよかったのかも。
「てか、何その荷物。出張あんの？」
そう思ったのも束の間、すぐに突っ込んでほしくないところを指摘される。
『まぁそんな感じ』
「へぇ、どこ行くの？その量だと長く行くんでしょ？」
『んー、まぁ』
「極秘？」
『そんなとこ』
「とか言って、彼氏と別れて家出てきたとかだったりして！」
図星すぎて、何も言えない。
「……え、ガチ？」
『今ので傷えぐられたんだけど』
「ごめんごめん！冗談で言ったつもりだった、まじごめん」
『ばか』
「だからごめんって！泣く？まって、泣くなら会社の中入ってから！」
『別に泣かないよ』
会社の入口に社員証をかざして並んで中に入る。
「でも、家ないんでしょ？」
『そりゃあ、出てきちゃったから』
「んー、じゃあさ」
『なに？』
「今日から俺んちに泊まるとか、どう？」
『え？』
「家賃はただ！ご飯作って！」
『それが狙いでしょ』
「あー、わかっちゃった？」
悪戯な笑みを浮かべる元太は正真正銘のお調子者。
『元太がろくでもないこと言ってくる時は、大体何か企んでる時でしょ』
「俺のことわかってんじゃん」
『ホストにでもなったら？』
「俺No.1になれるかな？」
『もう、目指そうとしないでよ』
「……ってのは冗談で。お前マジでこれからどうすんの」
『わかんない。とりあえず今日のホテル探す』
「そっか」
話が落ち着いたから、荷物をロッカーに詰め込んでロビーに戻ると、まだそこにいる人。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 315人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：愛生
| 作成日時：2022年9月25日 18時
