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松倉さんの家に着いてインターホンを鳴らして中に入ると、なんだか美味しそうな香りがした。
リビングに続くドアを開ける。
『……え?』
壁に貼られたHappyBirthday!の装飾。
テーブルには手作りの料理が沢山。
そして、エプロンを付けた松倉さんが笑顔で出迎えてくれる。
「お誕生日おめでとう!1日遅くなっちゃってごめんね」
『あの、これ……』
「Aちゃんのお誕生日パーティー!嫌だった?」
『嫌じゃ、ないです』
前にもあった。
誕生日に家に帰ったら、海人が沢山コロッケを作って待ってくれていたこと。
悔しいけれど、海人との思い出は多くて嫌でも思い出す。
「……Aちゃん?」
どこか不安そうな松倉さんが私の顔を覗き込む。
『ありがとうございます。嬉しいです』
「 ほら手洗ってきて?丁度ご飯できたばっかりだから冷めないうちに食べよ」
『はい!』
手を洗って改めてテーブルを見ると、カルパッチョやミネストローネ、ラザニア、それにシャンパングラスがあった。
「シャンパン飲める?」
『飲めます』
「よかった」
テーブルにあるグラスについでくれて、そのまま私の隣に座った。
「じゃあ1日遅れちゃったけど、お誕生日おめでとう」
『ありがとうございます』
シャンパングラスのコツンと軽い音が鳴って、一緒に1口飲む。
『……美味しい』
「あとで味変できるようにフルーツも用意してあるから、頃合い見て持ってくるね」
『嬉しいです。ラザニア、食べてもいいですか?』
「もちろん。俺お皿に盛るからその都度言ってね」
『そんな。自分で盛ります』
「今日の主役は働かなくていいの」
松倉さんが作った料理はどれを食べても全て美味しかった。
シャンパンは2杯目にフルーツを入れてくれて
松倉さんからのおもてなしをじっくり楽しんだ。
『全部美味しかったです。わざわざご用意いただいてありがとうございました』
「お口にあったみたいでよかったよ」
シャンパンを2杯飲み終えた頃、少し酔いが回り始めてふわふわした感覚に陥る。
『毎日松倉さんの作る料理が食べられたら幸せなんだろうなぁ』
「Aちゃんにならいつでも作るよ」
『ふふっ、本当ですか?』
「うん、本当」
『じゃあ私とっても幸せ者ですね』
松倉さんの顔をのぞきこむと、直ぐに目を逸らされた。
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作者名:愛生 | 作成日時:2022年9月25日 18時