Think rich, look poor (ページ49)

今日:9 hit、昨日:10 hit、合計:174,741 hit

49 ページ49

哲人side 続
＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

あの頃から暇さえあれば
母校の練習をこっそりみに行き

あの子の努力を見てきた

『昨日からあれは
スライダーなんか投げたらあかんねん！』

「俺は自信があったんや！」

『自信があってもあれで
打ち返されたんやで？』

あぁ高校野球のバッテリーやな

プロのバッテリーは割と淡々としてる

大体キャッチャーのサイン通りで
事はうまくいく

「もうお前なんか知らん！1人で球とっとけ」

ピッチャーが怒って
その子にミットを投げつけて帰ってしまう

『……なんやねん』

自分を信じてもらえなかった事への
無力感

それでもその子は泣かなかった

1「お前頭ええなあ」

声をかけるとギョッとこちらを見て
また目を細める

『やまだ、、てつと選手？』

1「なんでプロ目指さへんの？」

今はそれどころじゃないはず

やけど、あと1年もたたんうちに引退や

『……向いてると思いますか？』

不安げに目を合わせる彼女

恋愛感情なのかなんなのかは分からない

けど今確実にドキッとした

1「俺はお前の盗塁刺しプロで見てみたいけど」

『そう……ですか、』

1「気になることでもあるん？」

そう聞くと少し俯いて

『父が、もうあと数ヶ月なんです』

と呟いた

さっきから何か自信が無かったのはこれか

『正直そこまで気が回らなかったです』

1「そっか」

軽く "目指したらいいのに "

なんて考えてた自分を殴りたい

＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿＿

その数ヶ月後、春大前に行くとそこには

部員の前で空元気のあの子

そして俺を見つけるなり

『哲人さん！！』

と目を大きくして駆け寄ってきた

『私プロ目指します』

その目にはいろんな思いが
詰まっている気がした

『父の遺言ですこれは』

1「お父さんのためにも頑張らなな！

プロで待ってる」

『はい！すぐ追いついたりますから！』

表情とは逆のアクション

涙が出て止まらない様子

『…あれ、おかしっ』

不謹慎なのは分かってる
分かってるけど

高3の涙が綺麗でたまらなかった

1「今泣いとけ、好きなだけ」

綺麗な涙は俺だけが知ってることにしたかった

俺この子のこと好きや