40.プレゼント ページ40
ずっとタイミングを伺っていた。
Aに買った誕生日プレゼント。
2人になったら渡そうと思って、家まで送ると言ったはいいものの、なかなかタイミングがつかめない。
(何でこんな時にサラッとさりげなく渡せねぇのかなぁ、俺…)
アパートまでの道のり、Aは隣でいつも買い物に行くスーパーの話や、近所のパン屋のメロンパンが旨いとかいう話を楽しそうに話している。
俺はAの話をうわの空で聞いていた。
「送ってくれてありがとう。わざわざごめんね」
Aの声にふと我に返ると、すでにアパートの前に到着していた。
この期に及んでまだ言い出せずにいると、Aは「……じゃあ…」と笑顔でアパートに向かう。
とっさに俺はAの腕を掴んで引き留め、ようやく俺はバッグの中からプレゼントを取り出して渡す。
包みを開けたAが「わぁ〜可愛い〜」と声を上げた。
俺が選んだのは女の子たちに人気のブランドのスマホケースだ。
ピンクと白のバイカラーで、可愛さと品がある。
「これ、いいの?ブランドのものって高いんじゃ…」
「いいんだよ、そんなことは。Aに似合うんじゃないかと思って選んだんだけど。気に入ってもらえるか…」
「気に入ったよ!本当かわいい!風磨くんありがとう!大切にするね。あ、早速つけちゃおう」
そう言うとAはバッグからスマホを取り出し、カバーを付け替えた。
「どう?いい感じ?」
カバーを付け替えたスマホを耳に当てて、電話をかけるフリをして俺に尋ねた。
「お、おう。いいんじゃない?」
想像以上に喜んでくれるから、俺は少し気恥ずかしくなってそう答えた。
「風磨くん、本当にありがとね。めっちゃ嬉しい。風磨くんとサトルくんのおかげで素敵な誕生日になったよ」
キラキラの笑顔でAが言う。
いつだって真っすぐで正直で、笑顔は少し眩しすぎるくらいだ、と思う。
その笑顔を見るたび、俺はどんどんAに惹かれていく。
心臓が跳ねて、その後ギュッと締め付けられ、最後には心臓だけ溶けてなくなるような錯覚に陥る。
それでも自分でこの仕事を選んだ以上、無責任にAを巻き込むことはできない。
そんなことをしたら一緒にいられなくなるどころか、Aを傷つけてしまうことになりかねない。
部屋に入って行くAを見送りながら、俺は心臓の痛みから意識を逸らすことで精いっぱいだった。
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anpuu(プロフ) - お返事いただけて光栄です。大長編!尚更嬉しいです!毎日楽しみにしています(⌒▽⌒) (2017年5月30日 16時) (レス) id: b8556b424c (このIDを非表示/違反報告)
SaYaKa(プロフ) - anpuuさん» anpuuさん コメント&高評価ありがとうございます。本当に嬉しいです。このお話は私の中で大長編の予定でして…しばらくずっと続きますので、良ければ長くお付き合いください(*^^*) (2017年5月30日 16時) (レス) id: 3736ec2a42 (このIDを非表示/違反報告)
anpuu(プロフ) - 星10を押したのですが星9?になってしまいました。読んでいてとっても面白いです! (2017年5月30日 15時) (レス) id: b8556b424c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:SaYaKa | 作成日時:2017年5月26日 1時