Story 110 ページ10
こんなに鈍感な人だった？
普通は気付きそうなものじゃない？
それとも分かっててやってるの？
「ねぇ勝利くん。その・・・雅先輩？
勝利くんの事を好きなんじゃないの？」
『え〜そんなことないよ。』
私が慎重に発した言葉を
勝利くんは簡単に否定した。
『雅先輩は一人っ子だから
俺の事弟みたいに思うって言ってたし』
弟みたいって
すごく都合のいい言葉だと思う。
「でもね、
弟に抱きついたりはしないよね？」
少なくとも、私は兄や年下のいとこに
抱きついたりはしない。
『あ〜雅先輩、高校の途中まで
アメリカに居たらしいから
向こうの癖が抜けないんじゃない？』
「でも、『あのさぁ。』」
反論しようとした私の声を
勝利くんが遮った。
・・・怒ってる？
『Aさっきから何？
何が言いたいわけ？』
明らかに勝利くんが
嫌そうな顔をしているのが分かった。
「なんか・・・
凄く仲が良さそうだったから・・・。」
目線を少し下に向けて話す私の頭の上から
勝利くんの言葉が降ってくる。
『で？仲良かったら何？
部の先輩なんだから
仲悪かったらやりにくいじゃん。』
「でも・・・」
『それにAだってさっき
俺の知らない男と歩いてたじゃん！！』
その一言でうつむいていた顔を上げた私。
勝利くんは『はぁ』とため息をした後に
ゆっくりと話し出す。
『俺さ、ここに来る前に
Aのバイト先行ったんだよね。
場所は知らなかったけど
駅と家の間にある本屋って聞いてたから
何となくここかなぁ〜って感じで。』
・・・いつの間に？
勝利くんがお店に来たなんて
全然知らなかった。
『店に入ろうとしたら男の店員と
仲良さげに話してるAが見えてさ
その内に２人で店の奥に入っていった。
店の入口に営業時間書いてあったから
もう終わりなんだろうなって思って。
だから店には入らずに
真っ直ぐこっちに来たんだ。』
確かに閉店間際、誰もお客さんが居なくて
風磨さんと立ち話をしていた。
その時、ウィンドウの外から
勝利くんは店内を見ていたのだろう。
『なかなか帰ってこないから、
何度もAの帰ってくる方向を
見てたんだ。
そしたらさっきの男と
歩いて帰って来たのが見えたよ。』
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作者名：なおりん | 作成日時：2016年3月16日 20時
