検索窓
今日:4 hit、昨日:1 hit、合計:125,102 hit

※第86話 ページ38

×



・・・良い匂い。



懐かしいような。
安心するような温かい匂い。



「ーー高崎、起きろ」





・・・誰かの呼ぶ声が聞こえる。







×







『食わないと、冷めるぞ?』







×







「ひろ、・・・みつ?」







重たい瞼をゆっくりと開いた。
視界に捉えたのは柔らかい笑みを浮かべる諸伏景光。








ではなくーー








苦悶の表情を浮かべる降谷零だった。



「・・・あ、れ?」



ー・・・幻聴?



まだ覚醒しきらない頭をどうにか働かせ置かれている状況を確認する。



・・・そうか。



運ばれてる途中で寝ちゃったんだ。



「降谷さん」

名前を呼べば降谷さんが安堵の息を漏らし目を細めた。

その手には湯気の立つ一人用の土鍋。

「作ってくれたの?」

「あぁ。風邪を治すには食事と睡眠が一番だからな」

怠い身体を起こし土鍋の中を覗き込む。



長ネギにホウレン草。
キノコ類にすりおろしの大根。



どうやら俺の為に野菜たっぷりの粥を作ってくれたらしい。

しかも、わざわざ土鍋で。



ふんわりとした出汁の匂いが鼻を突く。

「・・・食べれそうか?」

「折角だから」

へらり、と笑う。

ベッドに腰を下ろした降谷さんからお盆とレンゲを受け取った。

「熱いから気を付けろ」

「ん、分かってる」



レンゲの半分ほどを掬う。
息を数回吹きかけて口に含んだ。



程好い野菜の食感と出汁の風味が口の中いっぱいに広がった。

「・・・美味しい」

「なら良かった」

降谷さんが嬉しそうに微笑んだ。

何も口にしてなかった分。
身体の中にじんわりと沁みていく。

「ちゃんと料理してるんだな」

夢中で食べ進めていると降谷さんが感嘆の声を上げた。

「一人が長いから。っていうか冷蔵庫の中、見たんだ?」

「すまない。食材を仕舞うのに開けさせてもらった」

申し訳なさそうに眉根を寄せる。



別に謝ることじゃないけど。
どことなく落ち着かない。

冷蔵庫の中身を知られるのは私生活を覗かれてるような気分になる。



降谷さんの腕も相当だろうな。



野菜入りって。



粥にそんな手間掛けないよ、普通。



×

※第87話→←※第85話



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (80 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
214人がお気に入り
設定タグ:名探偵コナン , 降谷零 , 男主   
作品ジャンル:アニメ
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

鐘稀(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます!楽しみにして頂いてるなんて嬉しい限りです!体調に気を付けながら、亀ですが更新頑張ります! (2019年12月29日 17時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - 涙さん» 初コメントありがとうございます!駄文で申し訳ないですが楽しんで頂けるようにこれからも頑張って更新します! (2019年12月18日 13時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - 続き楽しみに待ってます、 (2019年12月17日 22時) (レス) id: 5e6c663fd7 (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月25日 14時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。