※第79話 side:降谷 ページ31
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クスクスと笑う高崎の頬を濡らす涙をそっと指先で拭う。
見開かれた紅い瞳が揺れ視線が絡んだ。
「えっと。・・・その」
上気する頬。
涙で潤んだ紅い瞳。
言い様のない感情が胸の奥で渦を巻く。
「・・・離して、ほしい」
消え入りそうな声音にハッとする。
逸らされた視線。
高崎の両頬に添えられたままの手。
「ーーあぁ。すまない」
解放すれば高崎は安堵の息を漏らした。
・・・嫌だっただろうか?
僕に触られるのは。
高崎とヒロの関係が気にならないと言えば嘘になる。
見るからに高崎はヒロを慕っていた。
それどころか泣き崩れてしまうほどヒロを想っていた。
'兄のような存在'
本当にそれだけなのか?
それ以上の'何か'が二人の間には在るんじゃないのか?
胸が軋んだ音を立てる。
締め付けられるような息苦しさに眉根を寄せた。
「ーーさん。降谷さん」
呼び掛ける声に反応して視線を上げれば目の前には二枚のスティック型のUSBメモリ。
「これは?」
「景光のパソコンに入ってたデータ。・・・中身は見てない」
やはり高崎が。
心の何処かで、そんな気はしていた。
警察庁のNOCリストに侵入出来る人間など早々いない。
ましてや他の人間が侵入出来ないように細工するなんて簡単には出来やしない。
それが出来る高崎にとって他人のパソコンに侵入することは造作もないだろう。
「それもヒロの頼みか」
溜め息混じりに呟くと高崎が気まずそうに眉根を寄せ頷いた。
「・・・何かあったときは自分の痕跡を消してほしいって」
それほどまでに互いに心を通わせ信頼していた、ということだろうか。
暴くと豪語しておきながら、まだ本当の彼を暴けそうにない。
ヒロは彼を何処まで知っていた?
彼の心に触れる事が出来たのだろうか?
腹の底で黒い感情が蠢く。
ーー僕は知っている。
この感情の名を。
'嫉妬'
それに他なら無かった。
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鐘稀(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます!楽しみにして頂いてるなんて嬉しい限りです!体調に気を付けながら、亀ですが更新頑張ります! (2019年12月29日 17時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - 涙さん» 初コメントありがとうございます!駄文で申し訳ないですが楽しんで頂けるようにこれからも頑張って更新します! (2019年12月18日 13時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 続き楽しみに待ってます、 (2019年12月17日 22時) (レス) id: 5e6c663fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月25日 14時