※第７７話 ページ29
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カン、カン、カンーー
静まり返った空間。
響くのは二人分の足音だけ。
扉を明け辿り着いたのは闇夜の屋上。
ひんやりとした風が頬を撫でた。
「此処で景光が？」
「・・・あぁ。そうだ」
たどたどしい足取りで向かった先。
視界に映ったのは壁一面の黒い染み。
・・・此処に景光がいた。
壁の染みに手を伸ばす。
触れることは出来なくて空を掴んだ拳は行く宛もなく地面に下ろした。
言い表すことの出来ない感情が身体中を駆け巡り胸の中一杯に溢れていく。
ドサッーー
全身の力が抜け、その場に崩れ落ちた。
「っ、高崎!!」
歪んだ視界に映ったのは辛そうに眉根を寄せる降谷さんの姿。
「ごめ、・・・なさ、ぃ。ーー俺、」
助けられなかった。
景光の為に何も出来なかった。
この場所にすら来られなかった。
ーー違う。
ここに来る勇気が持てなかった。
涙が頬を伝い落ちた。
堪えきれなかった嗚咽が漏れる。
「俺は、・・・俺はっ」
'景光を救いたかった'
「もういい」
耳元で降谷さんの低音が響いた。
抱き締める腕の力が増す。
その力強さに身体が小刻みに震えた。
溢れ出した涙は止まらず降谷さんのシャツを濡らしていく。
「ふ、・・・ぅ」
「・・・もう自分自身を追い詰めるな。もう囚われなくていいんだ」
「っ、でも」
「お前は景光を思い続けて、泣いてくれた。・・・それだけで十分だ」
優しい声音が鼓膜を揺らす。
そろり、と降谷さんの背中に腕を回し縋り付くように抱き締め返した。
十分なはずがない。
泣いて良いのは俺じゃない。
辛いのは俺じゃない。
・・・苦しいのは俺じゃ、ない。
一人で背負って。
辛くて、苦しくて。
泣きたいのはーー
俺を抱き締める、目の前の男の方だ。
「っ、ぅあ、あぁあァアッーー」
言葉では言い様のない慟哭が虚空に響いた。
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鐘稀(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます！楽しみにして頂いてるなんて嬉しい限りです！体調に気を付けながら、亀ですが更新頑張ります！ (2019年12月29日 17時) (
レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - 涙さん» 初コメントありがとうございます！駄文で申し訳ないですが楽しんで頂けるようにこれからも頑張って更新します！ (2019年12月18日 13時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 続き楽しみに待ってます、 (2019年12月17日 22時) (レス) id: 5e6c663fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：鐘稀 | 作成日時：2019年11月25日 14時
