※第68話 ミステリー・トレイン ページ20
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胸の奥で渦巻く感情に蓋をして挑発するように微笑んだ。
「外野の事は気にしないで、自分の事に集中したらどう?安室さん」
「なら事件の詳細を教えていただけますか?」
直ぐに解決してみせますよ、と安室さんは妖艶な笑みを浮かべた。
「仕方無いなぁ」
8号車B室で亡くなったのは室橋悦人。
チェーンロックの掛かった部屋。
焦げ跡の無い米神の銃痕。
不自然に穴の開いたソファ。
「それは恐らく、亡くなっていた室橋さんに発射残渣を残す為のものでしょう」
それには俺も同意見だ。
それで?と安室さんが先を促すように俺を見つめた。
「安室さんにもヒントをあげる」
「その言い方だと、君は既に犯人に辿り着いている、というわけですか」
呆れたように肩を竦める安室さんに片頬を上げた。
「俺は探偵じゃないので」
代わりに解決してくれるんでしょ?
首を傾げれば一瞬目を丸くして安室さんは意地の悪い笑みを浮かべた。
「この後の予定に支障が出ても困りますから」
「安室さんらしい」
思わず苦笑が漏れた。
コナンに伝えた内容を耳打ちする。
ほぉ、と納得したように頷いて安室さんは歩き出した。
すれ違い様ーー
無意識に服の裾を掴んでいた。
「高崎さん?」
怪訝そうな声音。
弾かれたように顔を上げれば困ったように眉根を寄せる姿が瞳に映った。
「っ、安室さん」
'死んだら絶対に許さない'
景光に言った言葉が脳裏を過る。
ーー言えない、何も。
唇を噛み締める。
瞬間、全身が温かい'何か'に包まれた。
'抱き締められてる'
そう脳が理解するのに時間は掛からなかった。
「・・・安室さん?」
抱き締める腕に力が籠る。
「そんな泣きそうな顔をするな」
肩口に顔を埋め安室さんが甘く切なげな声音で呟いた。
規則正しい鼓動の音。
伝わる体温に何故か酷く安心する。
「行ってください、安室さん」
ゆっくりと胸板を押し返し微笑んだ。
「無茶はしないでくださいよ」
「・・・高崎さんも」
名残惜しそうにしながらも安室さんはコナンのいる一等車両へ向かった。
哀が逃げ込んでくるとしたら、恐らく。
安室さんの背中を見送って俺は亡くなった室橋悦人の部屋。
今は誰もいない7号車B室へ向かった。
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鐘稀(プロフ) - いおりさん» コメントありがとうございます!楽しみにして頂いてるなんて嬉しい限りです!体調に気を付けながら、亀ですが更新頑張ります! (2019年12月29日 17時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
いおり - すっごい面白い、、、。これからもお体に気をつけて更新頑張ってください。楽しみに待ってます。 (2019年12月29日 15時) (レス) id: bce55b4438 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - 涙さん» 初コメントありがとうございます!駄文で申し訳ないですが楽しんで頂けるようにこれからも頑張って更新します! (2019年12月18日 13時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
涙(プロフ) - 続き楽しみに待ってます、 (2019年12月17日 22時) (レス) id: 5e6c663fd7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:鐘稀 | 作成日時:2019年11月25日 14時