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※第9話 side:赤井 ページ10

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「そういう事にしといてやるよ」



溜め息混じりに吐き出された言葉が一体、何を意味するのか。

問い質そうにも下手をすれば探られるのは此方の方。

大人しくしていた方が良さそうだな。



「・・・残念。時間だ」

雪成が申し訳なさそうに眉根を寄せた。

「来たばっかりの江戸川には悪いけど、そろそろ帰るわ」

「えっ、もう?!」



翳された腕時計が午後5時を示している。



「カウンセリングの予約が20時に入ってるから帰って準備しないと」

「そんな遅い時間にですか?」

「相手の都合があるからな。どうしても遅い時間になる場合が多いんだ」

言いながら帰り支度を始める雪成。

「江戸川は?送ってやろうか?」

「ううん。蘭姉ちゃんに夕飯は昴さんと食べるって連絡してあるから」

「・・・いつの間に。ちゃんと湿布と包帯換えてもらえよ」



ボウヤの頭をぐりぐりと撫で付ける姿はとても愉快そうで。

一方のボウヤは恥ずかしそうに頬を赤く染めていた。



'面白くない'



胸の奥底に巣くう感情。

じゃれ合う2人の姿に己の狭量さを思い知らされた。

「・・・また何時でもいらしてください。雪成先生」

お決まりの社交辞令。
頭を撫でる雪成の手が止まる。

嫌そうに歪められた表情。



今の一言に何か気に障る部分でもあっただろうか?



「・・・それ」

「はい?」

「お前は俺の患者でも生徒でもないだろ。外でまで『先生』する気ねぇよ」

敬語も無しな、と片目を瞑り雪成の唇が綺麗な弧を描いた。

「では『A』と呼ばせてもらおう」

「んじゃあ俺も『昴』って呼ぶわ」

「ねぇ、雪成先生。僕も学校の外では『Aさん』って呼んでも良い?」

あざとい上目遣い。

効果があるのか無いのか。
Aの動きが一瞬、止まった。

「・・・駄目だ」

「何で昴さんは良くて僕は駄目なの?!」

「俺が養護教諭でお前が生徒だから」

コツン、とボウヤの額をAが指先で軽く小突いた。

「またな、江戸川。昴も」

ひらひら、と手を振りAは工藤邸をあとにした。



「・・・昴さん。譲る気ないからね、僕」

向けられる鋭い眼差し。
クツクツ、と喉の奥を鳴らした。

咥えたタバコに火を付けて肺一杯に煙を吸い込む。

「正々堂々といこうか、ボウヤ」

燻らせた紫煙の先。
ボウヤが挑発的な笑みを浮かべていた。



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※第10話→←※第8話 side:赤井



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設定タグ:名探偵コナン , 男主 , 愛され   
作品ジャンル:アニメ
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鐘稀(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます!引き続き楽しんでもらえるよう亀更新ですが頑張りますね! (2020年4月1日 7時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くれは - 頑張って!続き出来たら飛んできます!w (2020年3月30日 20時) (レス) id: 2bfb99dd96 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - くるすけさん» コメントありがとうございます!はい!ちょっとずつですが更新頑張ります!ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けたなら幸いです!とてつもなく亀で申し訳ないですが生ぬるい目で見守ってやってください(笑)ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くるすけ - 面白かったです!更新頑張ってください! (2020年2月24日 14時) (レス) id: 022b55326f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:撞稀 | 作成日時:2020年2月11日 21時

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