※第36話 side:赤井 ページ37
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「どんな家族だったかって聞かれてもなぁ」
頭を乱暴に掻き乱して「う〜ん」とAが唸り声を上げる。
・・・無理もない。
10年も前の話だ。
互いに面識はあっても言葉を交わしてない奴の事など記憶にないのが普通だろう。
そう思っていた矢先。
「羽田秀吉って知ってるか?」
Aの口から飛び出した弟の名前に胸の鼓動が一際大きな音を立てた。
「・・・あぁ。『太閤名人』とも呼ばれているプロ棋士の」
「同い年でさ。今でも懇意にしてるんだけど事件を解いたのはソイツの兄貴」
あれ以来、2人が連絡を取り合っていたのは初耳だ。
何故、俺に黙っていたのか。
・・・あとで秀吉に確認する必要があるな。
「イギリス人?の母親と新一と同い年くらいの女の子も一緒で」
母さんと真純の事か。
よく覚えているものだな。
それだけ印象強かったということなのか或いはAの記憶力が良いのか。
「無愛想で近寄りがたい感じだったけど新一の言葉には声をあげて笑ってたな」
・・・そんな無愛想に見えたか?
あの日は確か・・・
渡米した目的が単なる留学じゃなく父さんの失踪理由を探るためだったと知られて。
FBIへの入所を勝手に決めた事で母さんと殴り合いの喧嘩をした日。
・・・確かに。
機嫌は良くなかったかもしれない。
「謎解きしてる間は好奇心が擽られた子供みたいに目が輝いてたけど」
「・・・ほぉ」
開いていたアルバムを閉じAは遠くを見つめて微笑んだ。
「会いたいなぁ」
ポツリ、と呟かれた言葉に胸の鼓動が早鐘を打つ。
'沖矢昴'の正体を知らないA。
目の前に本人がいるなんて微塵も思ってないのだろうな。
・・・そうか。
'会いたい'
そう思ってくれていたのか。
思わず緩む口元。
見られないように手で覆い隠した。
「実は事件の前、新一と蘭が変な連中に絡まれて。助けてもらった礼もまだしてなくてさ」
はは、と照れ臭そうに笑うAに目を細めた。
「会えるさ。・・・そのうち、な」
今はまだ明かせない正体。
だが、もし許されるなら。
今度は'赤井秀一'としてAに会ってもいいだろうか。
『やぁ、兄さん』
『秀吉。今までAと連絡を取り合ってるのを何故、黙ってた?』
『何故って、聞かれなかったし。わざわざ言う必要もないかと思って。別に他意はないよ?』
『・・・そうか』
『会えて良かったね、兄さん』
『あぁ』
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鐘稀(プロフ) - くれはさん» コメントありがとうございます!引き続き楽しんでもらえるよう亀更新ですが頑張りますね! (2020年4月1日 7時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くれは - 頑張って!続き出来たら飛んできます!w (2020年3月30日 20時) (レス) id: 2bfb99dd96 (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - くるすけさん» コメントありがとうございます!はい!ちょっとずつですが更新頑張ります!ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
鐘稀(プロフ) - そらさん» コメントありがとうございます!楽しんで頂けたなら幸いです!とてつもなく亀で申し訳ないですが生ぬるい目で見守ってやってください(笑)ありがとうございました! (2020年2月24日 19時) (レス) id: ff7da1074b (このIDを非表示/違反報告)
くるすけ - 面白かったです!更新頑張ってください! (2020年2月24日 14時) (レス) id: 022b55326f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:撞稀 | 作成日時:2020年2月11日 21時